関連ページ:3軸ジャイロ
筆者がホバリングができるまでの過程で気が付いたこと、調べたことをまとめてみました。おそらくもっと効率的な調整方法、練習方法があると思いますし、勘違いもあるかもしれません。初心者の苦労話としてお読みください。
4.1.1. 機体を手で持ってトリムを取る
XRB-SRやSRBクォーク、300g以下のマイクロヘリコプターは機体を手で持ってトリムを取ることができます。メインローター直下の重心位置のスキッドあるいはバッテリーホルダーを持ち、ローター回転面が目線よりも上になるように保持します。このとき、テールローターが手や顔に当たらないようにじゅうぶん注意します(450クラスでは危険ですのでこの方法はやめてください)。
この状態でスロットルを少しずつ上げていきます。低回転では振動が出ることがありますが、きちんと組み立てられていれば回転が上がると振動は止まります。さらにスロットルを上げていくと、手にかかる重さが軽くなってきます。このとき、機体が前後左右に傾いたり、テールを振ったりしないか手にかかる力で判断します。
もしわかりにくいときはエルロンをゆっくり左または右に打ってみます。じわ〜〜〜っと機体が左あるいは右に傾く力が手に伝わってくるはずです。トリムが取れていれば、スティックが中立の状態では垂直方向の力しか感じないはずです。前後左右に傾いたり、テールを振る力が感じられる場合はトリムで調整します。もしトリム一杯でも補正できないときはリンケージをチェックします。
またこの時にローターのトラッキングもチェックしておきます。
4.1.2. ラダーの調整
メインローターが右回転のヘリの場合、反動トルクは機体を左回転させる方向に作用します。これを打ち消してテールを止めるためには、テールローターが機体を右回りさせる方向に推力をださなければなりません。つまりホバ時には、テールローターにピッチが付いて、上から見て左にテールを押す推力を発生する必要があります。このときに、ラダーサーボがニュートラルになるようにします。
ヘディグホールドジャイロは、サブトリム、トリムをニュートラルで使用するのが原則です。このために、以下の手順でサーボの位置決め、ロッドの長さの調節をします。
(1) テールサーボのサブトリムをゼロ、トリムをニュートラルにします。
(2)ジャイロをレートモードにします。GY240などでは、本体スイッチでAVCSをオフにするとレートモードになります。ゲインコントロールできるジャイロでは、一般に50%以上でヘディングホールドモード、50%以下でレートモードになります。なお、ヘディングホールドモードでは数値が大きくなるほど感度が高くなり、レートモードでは、数値が小さくなるほど感度が高くなります。
(3) モーターとアンプ間のコネクタを外し、送受信機の電源を入れます。サーボがニュートラル位置となります。このとき、サーボホーンがテールコントロールロッドに対して90度になっていない場合は、サーボホーンをはずしてはめなおし、90度になるようにします。ごくわずかのズレはかまいません。トリム、サブトリムは使用しません。ここで送受信機の電源を切ります。
(4) テールピッチコントロールロッドの長さを調節して、テールブレードに少しプラスのピッチ角が付くようにします。
(5) モーターとアンプ間のコネクタを接続し、送受信機の電源を入れます。慎重にゆっくりスロットル/ピッチを上げていきます。回転が上がって浮上直前になったとき、大きくラダー左または右に取られる場合は、浮上させずにモーターを停止させ、以下の調整をします(上から見てメインローターが右回転のヘリの場合です)。
・ラダーが左に取られる場合は、ラダーロッドを調節して、テールローターのピッチを増やします。
・ラダーが右に取られる場合は、ラダーロッドを調節して、テールローターのピッチを減らします。
この作業を繰り返し、レートモードでほぼテールが止まってホバするまでロッドの長さを調整します。ロッドの長さで調節しkれない場合はラダーサーボの位置を前後させます。
(6)ヘディングホールドモードにしてホバしてみます。安定してホバするはずです。またラダーの左右の効きのバランスが取れて、操縦しやすくなるはずです。
なお、テールがハンチングを起こす場合はジャイロ感度を減らします。
4.1.3. 重心位置
キット指定の重心位置(前後方向)を合わせます。メインローターシャフトの位置に重心を設定する場合はローターブレードをまっすぐに伸ばし、スタビライザー・バーを機体中心線に直角に(つまり左右方向に)し、指でスタビバーを持ち上げて前後の傾きを調べます。水平にならないときはバッテリー位置で調整します。
水平位置がわかりにくい場合は、わずかに前重心とするためにノーズヘビー(機首がわずかに下がる)にするとよいでしょう。逆に後重心=テールヘビー(機首が上がる)ですと、浮上したヘリが後退して操縦者に向かってくることがあり、パニックに陥ってコントロールできなくなる危険性があります。
4.1.4. 舵角
上述のように機体を手で保持して舵を打ってみると、舵がじわ〜〜っと効いてくるのが体感できます。舵角が小さいと舵が遅れ気味になり、機体が暴れてしまいがちです。
450ヘリ、たとえばT-Rex450シリーズは曲技性能を重視し、運動性を高めていますので、初心者には舵が敏感です。この場合は、ニュートラル付近の動作量を少なくする方向にエクスポネンシャルをかけます。最初は20〜30%(JRはプラス、フタバはマイナス)ぐらいから始めるとよいでしょう。特に初めのうちは大きな舵を打ちがちだからです。ただし、舵が鈍すぎても操縦しにくくなります。
なお、エルロン、エレベーター、ラダー、ピッチのサーボホーン側は、必要動作量が確保できるピッタリの穴位置を選ぶ必要があります。外側の穴を使って機械的に大きめの舵角を取り、送信機のトラベルアジャストやEPAあるいはデュアルレートで舵角を落とすと、サーボのトルクが低くなり、また分解能が荒くなり、場合によっては舵が残ったりする現象が現れます。たとえばエルロンのサーボホーンの中心から3番目の穴にボールを取り付け、送信機側デュアルレートを60%に設定したときスワッシュが10mm上下し、中心から2番目の穴にボール、デュアルレート100%で同じく10mm上下するなら、後者の方が適切ということです。
4.1.5. ピッチ
可変ピッチヘリの場合は、ピッチゲージを用いてピッチを調整します。450クラスの場合、通常はマイナス12°〜プラス12°とします。エンコンスティック最スロー(0%)でマイナス12°、センター(50%)でピッチゼロ、フルハイ(100%)でプラス12°に設定します。この設定ができたら、次はノーマルのピッチカーブを設定します。これは機種によって異りますので、取説にしたがって調整します。なお、ノーマルでも、マイナスピッチを3〜5°、入れておきます。これは、予期しない強風で機体が上昇したとき、降下させるときに役立ちます。
マイクロヘリの場合は、ピッチゲージがなかなかありません。また、最近はスタビレス(フライバーレス)の機体が多くなり、ピッチゲージが使いにくくなっています。筆者は、ブレードの動作量から、三角関数でピッチを計算するエクセルシートを作って使用しています。ほぼ実用的にはじゅうぶんと思います。以下のページをご覧下さい。
・関連ページ:マイクロヘリのピッチ測定
4.2.1. 離陸時に左に流れる
トリムがきちんと取れていても、ローターが右回転のヘリの場合、離陸時にスロットルを上げていくと機体は左あるいは左前方にすべっていきます。300g 以下のマイクロヘリの場合は左スキッドの下にストローあるいは5mm角のバルサ棒を取り付けて左スキッドを高く、つまり機体がやや右に傾くようにするとこの挙動を軽減でき、離陸しやすくなります(慣れてくれば適切な右舵を当てて補正できるようになります)。
下の動画は、ブレードmSRの箱出し2回目のホバです。最初、機体が反動トルクのため回転し、離陸時に左に流れているのがわかります。
4.2.2. 最初は地上ギリギリで
新しい機体でホバリングをする場合は必ずアメンボー(トーレニングスキッド)を取り付けます。スロットルを少しずつ上げていくとローターが回転を始め、やがて機体が浮き上がり始め、アメンボーは地上に着いていても機体のスキッドがわずかに浮き上がるようになります。アメンボーのボールを車輪にして地上をすべっていく感じです。最初はまずこの状態でエルロン、エレベーター、ラダーを操作し、ヘリが一定範囲内に留まるようにします。
「地表付近は吹き下ろしの影響で操縦がむずかしいので、一気にひざ上ぐらいまで上げたほうがよい」ともいわれていますが、これは初心者にはスロットルコントロールの判断がむずかしく、落として壊す確率が高くなるので、筆者はお薦めしません。最初はスティック操作に慣れるために、アメンボーを車輪がわりにして地面(フロア)を走り回る感じでよいと思います。
次にスロットルを少し上げて、機体を数秒間、5〜10cmぐらい浮上させてみます。このとき、長時間、浮かせる必要はありません。もしヘリが大きく姿勢を崩したらすぐにスロットルを下げて着陸させます。この状態ではヘリのローター吹き下ろしが影響して機体が不安定になりますが、なるべく一定範囲内に留めるようにエルロン、エレベーターをコントロールし、また機首を左右に振らないようにラダーをコントロールします。
このようにしてエルロン、エレベーター、ラダー操作に慣れ、少しずつホバリング高度を高くしていけば、姿勢を崩して機体を壊すことも少なくなり、安定してホバリングができるようになります。これはシミュレータで練習するときにもあてはまります。
4.2.3. ローター回転面を水平に
「ローター回転面を水平に保つ」ことを心がけると安定したホバリングができます。
シングルローターでメインローターが上から見て右回転のヘリ場合、ローター回転面がごくわずかに右下がりの状態でホバリングします(上掲のブレードmSRの動画参照)。XRB-SRのような2ローター同軸反転方式の場合は、ローター回転面が完全に水平な状態でホバリングします。
4.2.4. あて舵
ホバリングの操縦をたとえて「表面がツルツルのガラス板の上に金属ボールを置き、ボールが前後左右にころがらないように保持するのに似ている」という言葉があります。ホバリングの難しさをうまく表現していると思います。まだパソコンのシミュレータがない時代に、実際にラジコンヘリの練習用に、サーボを使って板の上のボールを水平に保つ練習装置が作られたことがありました。
ヘリの前後左右の傾きはエルロンとエレベーターで制御しますが、常に補正が必要です。たとえば機体が左に傾いたとき、右エルロンを打ちますが、機体が水平になったら(あるいは、水平になる直前に)わずかに左エルロンを打ちます。この左エルロンを打つことを「あて舵」と呼びます。
【あて舵のイメージ】(縦線|はスティックのニュートラルを示します)
右エルロン : |ーーーーーー>
あて舵(左) : <ーー|
場合によってはさらに反対方向にあて舵が必要なこともあります。
【あて舵のあて舵のイメージ】
右エルロン : |ーーーーーー>
あて舵(左) : <ーー|
あて舵(右) : |ー>
ヘリの舵は反応が鈍いので、姿勢が崩れ始めてから舵を打ったのでは間に合わずに制御しきれないこともあります。初めはどうしても大きな舵を打ってしまいがちで、機体が大きく暴れてしまいます。わずかな姿勢の変化、ローター回転面のわずかな傾斜を注意深く観察して、早め早めに小さな舵を打つように心がける必要があります。
なお、いわゆる「舵が残る」現象はヘッド回りのリンクを調整して摩擦抵抗を極力減らすと改善できることがあります。なめらかに動くけれども、ガタがない状態にします。
4.3.1. 段階的に練習
シミュレータでホバの練習をする場合、最初からすべての舵を操作するのは至難の技です。遠回りのようでも、段階的に習得していった方が、結果的には最短時間でホバがマスターできます。この点から、シミュレータソフトとしては、Heli-XあるいはReflex-XTRをお薦めします。これらのシミュレータには「ホバリング・トレーニング」メニューがあり、以下のステップでホバを段階的に習得できるからです(Heli-Xでは、さらにエルロン、エレベーター、ラダー、ピッチの単独練習と、任意の組み合わせが可能です)。
1. エルロン
2. エルロン、ピッチ
3. エレベーター
4. エレベーター、ピッチ
5. エレベーター、エルロン
6. エレベーター、エルロン、ピッチ
7. エレベーター、エルロン、ラダー
8. エレベーター、エルロン、ラダー、ピッチ
また、シミュレータで練習するときは、エンジンヘリなら50〜90クラス、電動ヘリなら500〜600クラスの大きなヘリでの練習をお薦めします。大きいヘリは画面上で見やすく、また舵の反応がまったりしていますが、小さいヘリは挙動が不安定で、敏感なため、難しくなります。
4.3.2. 正面ホバ
まず、上記のステップ1(エルロン)から始めましょう。練習あるのみですが、ひとつ、パソコンのモニタ画面では、奥行き方向の動きがわかりにくいことに注意が必要です。このため、正面ホバ(いわゆるケツホバ)の場合は、エレベーター操作がややわかりにくくなります。
4.3.3. 側面ホバ
正面ホバの次は、側面ホバです。上記の1〜8のステップで練習します。側面ホバでは、エルロン操作がわかりにくくなります。
また、シミュレータの通常飛行モードで、以下の練習をお薦めします。これは、ホバリング安定性の高い実物RCヘリで練習することもできます。
(1) 正面ホバから機体をゆっくり左に移動させます。つまり、自分から見て12時の位置のヘリを、10時30分の方向に移動します。ここでホバします。
(2) 安定してホバできるようになったら、ヘリをゆっくり後退させて、9時の位置でホバします。この時、自分の身体はヘリの機首に向け、首を左に向けてホバします。つまり、自分の左横でホバさせるわけです。ここで、目は機体の右側面を見ていることになります。この感覚を覚えます。
(3) (2)で安定してホバできるようになったら、身体を90度左に回して、ヘリの右側面に正対します。これで、側面ホバがきるようになります。反対側も同じ要領で練習します。
4.3.4 対面ホバ
対面ホバは、ピッチ/エンコン以外の各舵の操作が、見かけ上、すべて反対になるので、最初からすべての舵を操作するのは極めて困難です。上記の8ステップで段階的に練習する方法をお薦めします。
4.3.5. 対面背面ホバ
背面ホバは、大きなチャレンジです。筆者は数回、挫折し、およそ5年かかって、なんとかできるようになりました。
まず対面背面ホバから練習することをお薦めします。理由は、リカバリーが容易だからです。対面背面ホバ中に、ホバの維持が難しくなったら、アップを引きます。すると、機体は正面正立ホバにもどります。これに対して正面背面ホバ(ケツホバの背面)で練習していると、アップでリカバリーしたとき、ヘリが対面ホバ状態になるので、とっさの修正がむずかしくなりがちです。
以下は、カーティス・ヤングブラッドによる各舵の操作のポイントです。
・エルロン:
機体右にマフラーが付いていると仮定すると、機体の姿勢にかかわらず「左エルロンを打つと、常にマフラーがメインローターに近づく方向に回転する」とイメージ。電動ヘリの場合はマフラーがありませんので、筆者は右スキッドを意識すようにしています。・エレベーター:
機体の姿勢にかかわらず、「アップを引くと、ヘリの機首がメインローターに近づき、ダウンを押すと機首がメインローターから離れる」とイメージ。筆者はこのアドバイスを参考にして、メインローターとキャノピーをハサミに見立て、「アップを引くとハサミが閉じる」、「ダウンを押すとハサミが開く」とイメージしています。・ラダー:
正立状態の機体を上から見たとき、また、背面状態の機体を下からから見たとき、「右ラダーを打つと機体は時計回りに回転する」とイメージ。
このように、カーティス・ヤングブラッドは、エルロン、エレベーターに関しては、機体がどのような姿勢でも、同じイメージでコントロールする方法をアドバイスしています。「対面の時は左右が逆…」とか「背面のときはアップダウンが逆…」というように覚えるよりも、シンプルなので、習得も容易なのではないかと思います。
背面ホバ時のピッチ操作は、正立時とは逆になり、筆者は慣れるまでかなり練習が必要でした。いろいろ試行錯誤しましたが、
「シーソーの先にヘリが載っていて、エンコンスティックを下げると、シーソーの手前が下がり、シーソーの反対側に載っているヘリが上昇する、エンコンスティックを上げると、シーソーの手前が上がり、ヘリは下降する」
とイメージして練習し、なんとかできるようになりました。
ところで、シミュレータのホバリング・トレーニングモードでは、最初から機体が背面状態になっています。しかし、実物のRCヘリの場合は、まず正立ホバし、フリップして背面に入れる必要があります。このため、シミュレータでも、通常飛行モードでフリップの練習をし、背面状態で安定させる練習が必要です。
筆者の経験では、高度をやや高くとり、自分から見て左上方の位置(10〜11時方向)でホバさせ、そこからバックフリップ(アップフリップ)で対面背面ホバに入れるのが容易です。高度を高くとるのは、最初は背面になったときに適切なマイナスピッチを与えることが難しく 、高度を下げてしまうことがあるからです。また、左上方でホバさせるのは、ヘリの側面が見えないと、フリップしたときに、エレベーター方向で水平に止めるのがむずかしくなるからです。
また、背面ホバばかり練習していると、正立ホバができなくなることがあります。筆者の場合、正立の対面ホバができなくなりました。背面ホバを練習するときは、毎回、最後に通常飛行モードにして、正面ホバ、側面ホバ、対面ホバをひととおり練習(復習)するようにした方がよいと思います。
関連ページ:RCフライトシミュレータ
last updated: 2013.06.07