ホーム>初期鍵盤楽器>製作家・演奏家>須藤オルガン>仙台フォト日記 >98.10.26
宮城学院礼拝堂のオルガン大規模保守作業も最後の段階になりました。
今日はPedalの二つのリードストップの整音を点検しました。
27年前このオルガンが入った頃はネオバロックオルガンの最盛期でした。ようやくメカニカルなオルガンが当たり前になってきた頃です。同じ時期に入ったオルガンとしては 東京三鷹の国際基督教大学のオルガンがあります。
わたしは当時、辻オルガンの2年生、同僚の澤民介は3年生でした。辻オルガンから 澤はICUへ、私は仙台に派遣されオルガン組立作業を手伝ったのです。 仙台のこのオルガンが縁で後に私はドイツに渡ることになります。
その時に自分の興味でもらっておいた図面が今役に立つとは当時はまるで考えませんでした。 当時このオルガンを整音したのは Wolfgang Stoecker という男でした。私は彼の整音作業を驚異の目で観察していたのを覚えています。 しかし、残念ながら今このオルガンの状態を見ると問題がおおいことがわかります。 今日の画像はそのひとつの例です。
リード管ではリードが作る音と、リード管の上に有る共鳴管との相互作用で音が作られます。 共鳴管の正しい共鳴点を使って鳴らしてやらないといけません。ネオバロックのオルガンでは殆ど共鳴点を使わず、共鳴点からどれだけずらすか、によって整音をしていたようです。
その結果、このオルガンのリード管の共鳴管は短すぎるものが殆どです。今回、整音の改良もしたい旨 提案したのですが、これは受け入れらませんでした。しかし、共鳴管の長さが原因で音の問題がどうしても解決できない場合には応急措置として、紙を使って解決しました。 決して美しくはないのですが、機能は完全に果たします。
画像ではパイプが半音階で並んでいるところ、一本だけ紙で長さを足しています。半音低いパイプといくらも長さが違わないことがよく判ります。共鳴点がほぼ半音違っていたわけです。いつの日か機会が与えられれば、他のパイプも含めてきちんと半田付けをして長さを伸ばし、整音をやり直したいところです。