ホーム>初期鍵盤楽器>製作家・演奏家>須藤オルガン>仙台フォト日記 >98.09.19
今日は Flute 2' と Tierce 1 3/5' の整音を終わりました。
CPUの設計を仕事としながら、中新田バッハホール音楽院でオルガンを学んでいる方が午後尋ねてこられました。 彼は私達が3時の休憩をしている間も惜しんでオルガンを弾いておられました。
今日の画像はフルート系(比較的やわらかな音色の唇管)のパイプの歌口部分です。このパイプでは、歌口の左右に日本語では耳と言ったほうがよさそうですが、ヨーロッパ語では髭という部分が見えています。
上唇と下唇の間が歌口、下唇の後ろに板があります。
【英】Languid 【独】Kern
このKernと下唇との隙間から風が上唇の方向に流れ出て発音します。
Kernの前端に注目してください。キズが等間隔についています。
これは【英】Nicking 【独】Kernstich と呼ばれています。針灸の道具に三稜針というのが有ります。読んで字の通りです。それと同じような道具でこのようなキズをつけます。
フルート系のパイプに起きがちな風切り音を消す、やわらかな音色を得るなどの目的でこのキズをつけます。一旦付けてしまうと完全には元に戻せないので時には注意深く少しずつ増やして行くようにします。特にPrincipal系のパイプではそのPrincipalらしさを害してしまうくとがあるので注意が必要です。
フルート系のパイプの整音には欠かせない技法です。いろいろ観察して考えているのですが今もってKernstichの作用の原理は解明できません。
画像の左後ろのパイプのKernstichはさらに細かく入っています。
北ドイツに多くの名器をのこしたSchnitgerはKernstichを殆ど使っていないそうです。 私にはその技法が今もってわかりません。