2005年、XRB-SRでラジコンヘリに入門した筆者(当時52才)の経験から、ラジコンヘリ入門について述べています。中高年初心者の体験談としてお読み下さい。
まず最初に「ラジコンヘリ入門、あるある」の動画をご紹介します。入門用へリセットの宣伝ビデオですが、なかなかよくできていると思います。シミュレータを併用して、同軸二重反転ヘリから固定ピッチヘリへ、そして可変ピッチヘリに進むのが、一見、遠回りに見えても、結局、最短距離だということがコメディタッチで描かれています。このページでも、パソコンのRCシミュレータを使用されることをお薦めします。
目次:※このページ内の項目へのアンカーです。
2.1. シミュレータ
2.2. SRBクオークから450/500ヘリへ
2.3. おすすめ入門コース
2.4. トイラジ・ヘリ
2.5. 安全上の注意
まず、ヘリの指導をしてくれるラジコン専門店を探すことをお薦めします。もし、知り合いにラジコンヘリのベテランの方がいらっしゃるなら、その方に教えてもらうのがベストです。独学は、個人差もありますが、かなり難しいと考えてください。
最近のラジコンヘリは「室内で練習でき、ホバリングがマスターできます」と簡単なように宣伝されることもありますが、ラジコンの中ではもっとも難しいカテゴリーです。実際、筆者の知人でも、電動ヘリを購入したもののホバリングさせることができず、そのまま押し入れにしまったまま、というケースがありました。
ラジコンヘリのむずかしさ、それは以下の4つの操縦系統を同時に操作しなければならないところにあります。
エルロン:
機体の左右の傾き(ロール)。メインローターのサイクリックピッチを変えることで左右の揚力差を生み出します。送信機の右スティックの左右動作に割り当てられています。
エレベーター:
機体の前後の傾き(ニック)。メインローターのサイクリックピッチを変えることで前後の揚力差を生み出します。送信機の左スティックの上下動作に割り当てられています。
ラダー:
機首を左右に振る動き(テール)。シングルローター、テールローターを持つヘリの場合はテールローターによって制御します。同軸二重反転ヘリの場合は2つのローターの回転数に差をつけることで、この動きを生み出します。送信機の左スティックの左右動作に割り当てられています。
コレクティブ・ピッチ/スロットル:
メインローターのピッチの増減と、モーター回転数の増減を行います。送信機の右スティックの上下動作に割り当てられています。ガバナー(ローター回転数を一定に維持する方式)では、スロットルスティックはコレクティブピッチのみ制御します。
ヘリの基本はホバリングですが、空中に機体を止めるためには、この4系統すべてを細かく操作し続けなければなりません。これが最初はかなりむずかしいのです。
しかし現在は、パソコンのRCシミュレータという強い味方があります。根気さえあれば、ほとんどの方がホバリングをマスターできると思います。
パソコンのRCシミュレータは各種ありますが、筆者の使用した範囲ではHeli-X、Phoenix、Real Flightがお薦めです。Heli-XはMac用もあります。
ヘリでホバする場合、最初から上記の4つの操縦系統を適切に操作するのはまず無理です。そのため、Heli-Xでは、最初はエルロンのみ、次にエルロンとピッチ、エレベーターのみ、エレベーターとピッチ、エルロンとエレベーター…というように、段階的に練習できるようになっています。これは大変に有効で、ホバリング習得までの時間を大幅に短縮してくれます。
また、正面ホバから、側面ホバ、対面ホバ、背面ホバに進む場合も、シミュレータを使用すれば最短の時間で、機体を壊すことなくマスターしていくことができます。シミュレータの詳細については、下記ページをご覧下さい。
・RCフライトシミュレータ@fly with the wind
シミュレータでホバリングがマスターできたら、SRBクオーク(ヒロボー)など、シングルローター固定ピッチヘリに進みます。RCヘリとしては抜群の安定性を持ち、ホバリングは容易です。
次のステップとして、風速4〜8m/sの風のある日にも屋外でフライトしたいのなら、450クラスがおすすめです。シミュレータできちんとホバリングをマスターし、SRBクオークで屋外フライトに慣れれば、450クラスの可変ピッチヘリへもスムースに移行できるでしょう。
このクラスでは他にエンブラ 450E(ヒロボー)、T-Rex450シリーズがあります。
ところで、シミュレータでは、操縦はマスターできても調整はマスターできません。シミュレータの機体は完璧に調整ができた機体です。しかし実際のRCヘリは、たとえ完成機であっても微妙な調整が必要です。メカ搭載やリンケージにもノウハウがあり、これは場数を踏まないと身に付きません。
ですからシミュレータで飛ばせるからといって、すぐに高性能機を飛ばそうとするのは危険です。まず最初は、やはり飛行特性がマイルドで破損した場合もパーツがあまり高価ではなく、入手性のよい機体を選ぶべきでしょう。また、できるだけ経験者の指導を受けることをおすすめします。
初心者がホバリングに挑戦する場合は大きい機体ほど安定していて習得が容易です。また屋外で飛ばす場合は、大きく、重く、パワーがあるほど風の影響を受けにくくなります。
逆に小さくて軽いマイクロ/ミニヘリは、挙動が不安定似なりがちで、普通は風とは感じないようなごく弱い風でも影響を受け、飛ばしにくくなります。調整に関しても、機体が大きい方が精度の維持が容易です。
とはいえ、機体が重く大きくなるほど広い飛行場所が必要で、また墜落のダメージも大きく、機体、モーター、アンプ、バッテリー、補修パーツすべてが高額になります。
このような点を総合的に評価すると、SRBクオークシリーズが屋外用ヘリの入門に適しているといえます。
RCヘリを始めるとき、以下の2点がポイントと考えています。
・シミュレータは不可欠。
・ヘリは大きい方がホバリングが容易。
現時点(2017年6月)での筆者のおすすめ入門コースは以下の2コースです。
自宅リビングでのホバを目標とする入門コースです。早朝など、風がまったくないときなら、屋外でもフライトできます。
ステップ1:シミュレータ Heli-X
ステップ2:マイクロクワッド(ドローン):X100(XK)
ステップ1と2は同時進行でもよいと思います。運動神経のよい人、勘のよい人なら、シミュレータなしでも、マイクロクワッドで短時間でホバができるようになり、さらに前進飛行ができるようになるでしょう。
もし筆者がシミュレータで練習しなかったら、風のある屋外フライトで、クラッシュと修理の繰り返しで挫折し、仮にこれを乗り越えたとしても、対面ホバで挫折していたことと思います。
河川敷などの広い屋外でのホバと上空飛行を目標とする入門コースです。
ステップ1:シミュレータ (Heli-X)
ステップ2:飛行重量 200g以下のシングルローター可変ピッチヘリ:SRBクオークSG(ヒロボー)など
ステップ3:450クラス可変ピッチヘリ:EMBLA 450E、T-Rex 450など
SRBクオークSGは、調整ホバだけならリビングでも可能ですが、基本的には体育館や屋外でフライトするヘリです。慣れれば多少の風が吹いていてもフライトが可能です(およそ3〜4m/sまで)。ステップ2〜3にもHeli-Xを併用します。ステップ3のEMBLA 450Eは、本格的な作りで、3軸ジャイロを搭載すればホバは容易です。同じクラスでも、T-Rex450シリーズは、運動性重視なので、自律安定性は弱く、ホバはややむずかしくなります。
2.4.1. 意外とむずかしい
「トイラジ」とは、「トイ・ラジコン」の略で、玩具の流通経路で、原則として玩具店やデパート、スーパーのおもちゃ売り場で販売されるものです。完成品でプロポ(送信機)付きのセットで販売されます。子供が対象で、ホビラジに比べると安価ですが、補修部品は基本的に入手できません。「ホビラジ」(ホビーラジコン)とは、このページでご紹介しているもので、模型の流通経路で、模型店(ラジコンショップ)で販売されます。組み立てキット、完成品があり、プロポのグレードも高くなります。原則として14才以上を対象とし、補修部品も入手可能です。
トイラジのマイクロヘリとしては、手の平サイズで安定度の高い安価なヘリがあります。また、総合通販ショップがネット販売、カタログ販売している、比較的大きいラジコンヘリも、トイラジに分類できます。
プロモーションビデオを見ると、リビングで軽快に飛行していたりして、なかなかおもしろそうです。まず、こういう手軽なモデルをひとつ購入してみるのもよいでしょう。ただし、いくつか注意点があります。
まず、「初心者でも簡単に飛ばせます」といっても、まったくの初心者には意外とむずかしく、多くの場合、すぐに落として壊してしまうことが多い、という点に注意が必要です。また、ホバはできても、前後左右に動かそうとするとむずかしい、という機種もあります。
またトイラジヘリは機体や飛行用バッテリー(リチウムポリマーバッテリー)に当たり外れがあるようで、飛行時間も2〜3分程度と短く、初心者にはかえって練習が難しくなります。また耐久性や破損の際のパーツ類の入手性などを考えると、安価なものはそれなり、ともいえます。
「安物買いの銭失い」にならないように、あまりトイラジには期待しない方がよいと思います。また、これに関連して、オークションや通販で販売されている安価なフルセットの電動RCヘリも、初心者にはむずかしいケースがありますので、注意が必要です。
2.4.2. スティックモードに注意!
トイラジヘリの場合、プロポ(送信機)のスティック方式が国内のホビラジの方式と異なる点にも注意が必要です。トイラジヘリの多くがスロットルコントロール(ローター回転数の増減)を送信機の左スティックに割り当てていますが、これは主にアメリカで使われているモード2と呼ばれる方式です。
これに対して、日本、ヨーロッパ、オーストラリアなどでホビラジに広く使われているのはモード1で、スロットルが右スティックに割り当てられています。モード2で慣れてしまうと切り替えにとまどうことになるでしょう。日本国内の模型(ホビラジ)流通ルートではモード2のプロポは販売されていません。
ヘリの操縦にはモード2が適している面もありますので、モード2でフライトされているベテランの指導を直接、受けることができるのであれば、モード2で始めてもよいと思います。しかし、そうでない場合は、原則として日本国内ではモード1で始められることをお薦めします。
左スティック
左右 |
左スティック
上下 |
右スティック
左右 |
右スティック
上下 |
|
モード1
|
ラダー
(テール) |
エレベーター
(ニック) |
エルロン
(ロール) |
スロットル/ピッチ
|
モード2
|
ラダー
(テール) |
スロットル/ピッチ
|
エルロン
(ロール) |
エレベーター
(ニック) |
ラジコンヘリは危険です。小さく軽いブレードmSRでも、回転するローターが幼児や小児の目にでもぶつかれば、最悪、失明する恐れがあります。特に電動ヘリはバッテリーが接続されていてスイッチが入ればすぐにフルパワーでローターが回転して飛び上がってしまいます。自宅の室内で飛ばすときも、屋外で飛ばすときもじゅうぶんな注意が必要です。
実物のヘリも、飛行機に比べるとはるかに事故が多いそうです。それだけ、ヘリの整備と操縦には高度な知識と技量が必要で、これはラジコンヘリも同様です。
またラジコンの場合は、機体に問題がなくパイロットがじゅうぶんな技量を持っていても、地形や大気状態あるいは電波状態によってはコントロール不能(ノーコン)になることがあります。ヘリは操縦不能になった場合、前後左右上下の全方向に暴走する危険があるので、河川敷グランドなどでも、近くを人が通るような場所は避け、万が一の事態に備えて十分なエリアを確保する必要があります。
実際、ごくまれなケースとはいえ、ラジコンエンジンヘリによる死亡事故も起きています。「ラジコンヘリは危険」ということを認識しておく必要があるでしょう。
また、ラジコンヘリには特有の問題点があります。
ラジコン飛行機の場合は速いスピードで飛行しますから、見学者もそれなりに身構えますし、飛行経路が予測できるので、万が一の場合は回避行動をとることができます。ところがヘリのホバリングは一見、非常に安定して(静止して)見えます。これが、かえって危険を招くことになります。
実際にはパイロットが集中して細心の注意をはらって、適切に調整された機体をコントロールすることによりホバリングが維持できるのですが、見た目には静止しているので、一般の見学者は安心してしまうのです。またホバリング時にはパイロットと機体の距離が近いこともラジコン飛行機と異なる点です。
しかし、一瞬でもパイロットの集中力が途切れたり、無線装置の誤動作やヘリの機械的トラブルが発生すると、ヘリは急速に大きく動きます。しかもヘリが暴れだすと前後左右上下360度のどの方向に動くか予測できず、これが近くで見ている見学者に危険を及ぼすことになります。
万が一のトラブルに備えて、たとえホバリングするだけでも、ラジコンヘリは、それぞれのサイズに応じて、他の人に危険を及ぼさない空間でフライトする必要があります。
last updated: 2017.06.20