ラジコンヨットはマストやセールの取り付け方、索のテンションのかけ方によって帆走性能が大きく変化します。同じヨットでも、調整によって、よく走るヨットにもなれば、よく走らないヨットにもなります。筆者は2015年7月からラジコンヨット始めた初心者なので、ネットで調べたり、ベテランの方に教えていただいたりして試行錯誤しています。 以下は、そのメモです。
以下の記述には、ヨットレースで好成績を出すための調整と重なる部分もありますが、筆者がヨットの調整をする主目的は、微風時から強風時まで、快適に、また安全に帆走するためです。そのために、自分の技量に合わせてラジコンヨットを楽しむ方法を模索しています。
なお、基本的なラジコンヨットの用語や走らせ方については、以下のページを参考にしています。
ベテランの方がご覧になって心得違いなどありましたら、ご指摘いただければ幸いです。下記宛にメールでお知らせください。
sakazaki(アットマーク)ari.bekkoame.ne.jp
※以下の太字の引用文(末尾に「VT」と表示)は"Victoria Tuning"(英文ページ)の一部を抄訳したものです(現在はこのページは移動したか閉鎖されたかでアクセスできません)。
【目 次】
※このページ内のアンカーへのリンクです。
1.メインブーム、ジブブームの位置
2.セールのフットカーブ
3.マストの傾き
4.バックステー・テンション
5.ブームバング
6.ジブブーム・トッピングリフト
7.ジブブーム・カウンターウエイト
8.サイドステー・テンション
9.ハル、キール、ラダーの表面処理
***
セールスティック最スローでのブーム位置は、一般にメインブームはセンターラインより5度、ジブブームは10〜15度にするとよいようです。このブーム角度で、クローズホールド(向かい風帆走で最大角度で風上に切り上がる)となります。ただ、ヨットによって最適値は異なるようなので、セッティングを変えてテストを繰り返す必要があります。強風時には、これよりわずかに開きます。
アビーム(横風帆走)では、45度、開きます。
セールスティックフルハイでのブーム位置は、メインブームが80〜90度、ジブブームが90〜100度がよいようです。ただし、サイドステーがあるヨットでは、90度では索に干渉するので、80度程度までしか開けないこともあります。このポジションはランニング(追い風帆走)で使用します。
セール下部(ブーム直上)のセールのふくらみ(フットカーブ)は10%が基本とされています。例えば、セール下端の前後方向の幅が20cmなら、ふくらみは2cmとなります。しかし、セールは多少伸縮するので、この設定は実際には難しくなります。定規で軽く押した状態で計る、フットカーブに合わせた治具を当てる、などの方法があるようです。これも、実際に帆走させてみて、セッティングを少しずつ変えて最適値を探す必要があります。フットカーブは、セール後端をブームに取り付けている箇所を前後させて調整しますが、特に弱風時には、数ミリ動かしただけでも性能が変わります。
弱風では後傾させ、強風では前傾させる。〔VT〕
マスト全体が前傾するか、後傾するかで、後述のバックステー・テンションでマストを湾曲させることとは効果が異なるようです。
弱風ではテンションを弱く、強風時にはメインセールの中央部をフラットにし、上部がねじれて風の力を弱めるように最大限のテンションをかける。メインセールから最大のパワーを得たいのなら、バックステーを緩め、マストをまっすぐにしておく。バックステーが強すぎるとセールのドラフト(ふくらみ)が後ろに下がるので好ましくない。ドラフトは30〜45%の位置を維持する。〔VT〕
実際に風を受けた時のセールのふくらみはなかなか確認できませんが、小型のヨット(艇長650mm以下)であれば、扇風機の風をセールにあてることで、ある程度、確認できます。扇風機の風は整流されていないため、セールが細かくバタつきますが、どこでふくらみが最大になるかは、おおよその見当が付きます。
弱風時にはテンションを弱く、風が強くなるに従ってテンションを増やす。〔VT〕
ドラゴンフォースの場合、ブームバングの調整ナットを半回転させるだけでもメインセール後端のテンションが大きく変わります。ただ、テンションを強くすると、タッキング時に風に正対した状態で止まってしまうことがあります。わずかにメインセールの上部が開いているぐらいの方がタッキングしやすいようです。
弱風時には、メインセールとジブセールの間のスロットを維持するために充分な程度の、弱いテンションをかける。後ろから見てジブセールのカーブとメインセールのカーブが同じになるようにする。風が強くなってヒールが大きくなるならば、テンションを1.5mm単位で強くしていく。これにより、ジブセールの上端がねじれてパワーが弱まる。これはメインセールのバックステー・テンションに相当する。〔VT〕
最近のラジコンヨットは、ジブブームにトッピングリフトを付けることが一般的になってきています。ドラゴンフォースには標準で付属しています。キットには付属していなくても、PEラインなど伸縮しない糸とバウジーがあれば、簡単に追加することができます。
ヨットを傾けて、ジブセールがバランスするように(水平を維持するように)調整する。これは、弱風時の追い風帆走(ランニング)で観音開きを容易にするため。しかし、船首に重りがあると、中風〜強風時にはバウ沈(船首の水没)を助長するので、外した方がよい。〔VT〕
追い風帆走の時にジブセールとメインセールが反対側に開くことを「観音開き」(英語ではwing-on-wing)と呼びます。観音開きになると、メインセールとジブセールがそれぞれ風を最大限に受けるので効率が高まります。ジブブームの先端に鉛などの重りを取り付け、ジブブームのバランスを取ると、弱風時でもこの観音開きがしやすくなります。
マストの上下にサイドステー(シュラウド)がある場合、極端な強風の場合には上側を緩め、下側を強める。これにより、マストの上の部分が後ろに曲がってパワーを減じる。弱風時には、逆に上側を強め、下側を緩める。こうすると弱い突風の際にマストが前傾するようになる。〔VT〕
ヨットによっては、マストの中間から左右に索を張るようになっています。これがサイドステーで、単にマストを支えるだけではなく、マストのしなり具合に影響します。
なお、ドラゴンフォースなど、最新のレーシングヨットではサイドステーは省略されることが多いようです。
ハルにワックスをかけてはいけない。ワックスは水をはじくために表面に乱流をもたらし、抵抗となる。ここでの秘訣は、水が微小な層となってハルに付着するようにすること。そのためにハル、キール、ラダーを#600〜#1000でサンディングする。この時、水の流れに沿って船首から船尾へ、あるいは逆に船尾から船首に向かってサンディングする。〔VT〕
試しにドラゴンフォースのキールを#600耐水ペーパーでサンディングし、蛇口から水を流してみました。ツルツルの表面よりも滑らかに流れているように見えます。そこでハル、キール、ラダーを同じようにサンディングしてみました。帆走後にヨットを引き上げてみると、水がはじかれずに、ハルやキールの表面にうっすらと付着しているように見えます。気のせいかもしれませんが、微風にも反応して動いてくれるようになった感じがします。
また、RCレーザーのハルは合成樹脂ですが、表面は平滑ではなく、細かい凹凸を付けてモールドされています。
レイノルズ数がおよそ4万以下のフリーフライトグライダーやサーマルグライダーなどの場合は、主翼表面を平滑にするよりも、微細な粗面として乱流化した方が気流が剥離しにくくなり、失速性能が良くなるという研究もあります。特に翼弦長が200mm以下の場合は、表面が平滑なフィルムよりも、紙を貼った翼の方が失速しにくくなります。似たような現象がヨットのハルでも起こるようです。
***
弱風での帆走(ProBoat Ragazza)
強風での帆走(Joysway DragonForce65)
2016.02.20
last updated: 2017.01.05