模型というと「作る楽しみ」を思い浮かべる人が多い。しかし最近のラジコンは飛ばす楽しみが主体。このため、機体の自作やキットから製作する人は少数派になってきている。
国際模型航空連盟(CIAM)のF3A(ラジコンスタント)やF3B(ラジコングライダー)の規定でも、かつては「機体は競技者が自作したものであること」という条項があったが、だいぶ前にこの規定は外された。
模型飛行機で自作が重視されたのは、そもそも操縦機構を持たないフリーフライト機から始まったからだろう。フリーフライト機の場合は、一度飛ばしてしまえば、あとは機体の自立安定性によって飛行するから、機体製作で性能が決まる。
しかしラジコンの場合は操縦することができ、現在のラジコン飛行機やグライダーの競技会は、パイロットの操縦技量を競うものになってきた。
それでも筆者がラジコンを始めた1974年頃には、まだまだ機体はキットから作る、という時代だった。ラジコンのキットというのはバルサ材やヒノキ棒、合板などがカットされたもので、これに原寸大の図面が付いていて、接着剤を使って組み立てるもの。
機体の骨組みが完成したら、紙あるいは絹を貼り、ドープやエンビで塗装して仕上げた。
ただ1970年代には、まず被覆に変化が現れた。骨組みに貼る被覆フィルム(ソラーフィルム、スーパーモノコートなど)が普及し始めたのだ。これは薄いポリエステルフィルムの裏に感熱式の接着剤が塗布されたもので、アイロンやヒートガンを使って機体に貼るもの。ある程度、収縮するので曲面にも貼ることができた。
表面は平滑で、耐燃料性もあったが、それまでの絹貼りドープ仕上げに比べると色が限定され、ちょっと安っぽい感じがするので、当初は初心者の使うもの、安易な被覆、というイメージだった。
次のキット製作の変化は、瞬間接着剤の登場だろう。特にバルサ材に使用できるタイプの登場は革命的だった。それまでは木工ボンドやセメダインCを使って接着し、マチ針で固定して接着剤が硬化するまで数時間待たなければならなかったのが、文字通り瞬間的に接着できるので、キット製作の時間が大幅に短縮されることになった。
しかし、やがてバルサキットは衰退する。入門機も競技用機も、完成機が安価に入手できるようになったからだ。当初、完成機は東南アジア製であまり品質がよくなかったが、やがて旧共産圏の東ヨーロッパが参入すると、かなり高品質の機体が安価に入手できるようになった。
キットの製作には接着剤や被覆フィルムの費用がかかるので、それほど安価ですむわけではない。加えて、大きな主翼や胴体を作るには場所も必要だし、時間もかかる。場所と時間、これは日本の平均的模型愛好家にとってはなかなか思うようにならない。となると、多少割高でも完成機を購入した方がよい、ということになってしまう。
筆者も、ある時期まではバルサキットを作ったり、自分で設計して自作したこともあったが、高性能の完成機が安価に入手できる現在では、キットを作ることはめったにない。キットを作る時間があれば、それをフライトにまわしたいことも大きい。
年配のモデラーには、自作やキットを作ることが楽しみ、という人もいるが、現在ではほとんどのモデラーは「飛ばす楽しみ」主体になってきている。
2006.8.10