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2002年1月
山野辺 暁彦
2005.5.9改訂
新年おめでとうございます
Contents:
・ネットノット(結び目)かんない
・音楽の隠れ家シリーズ 02.02.17
・新作クラヴィコード展示 試奏の会 02.01.203.貸し出し楽器
4.Books on musical instruments (楽器についての本)
5.Hubertgasse (フーベルトガッセ)
6.Cafe Himmel
※このページは『ヴァージナル通信no.17』のテキスト部分を転載したものです。図および地図は省略しています。
1. Something New
1. ネットノット(結び目)かんない オープン
佐野清彦の音楽スペース、『ネットノット(結び目)かんない』に下記typeII クラヴィコードを設置しました。 このスペースはリハーサルルームとして、どなたでも使うことができます。 このスペースにはクラヴィコード以外にフレミッシュヴァージナルがあります。 なお、2002年1月20日には、新作クラヴィコード展示と試奏の会があり、typeIIのクラヴィコードを試奏できます。下記EVENTSおよび、この音楽スペースの紹介をご参照下さい。
2. Clavichord glossary 第一版完成
クラヴィコードに関する用語(英語)について、解説しました。 クラヴィコードについての英文の本、論文、あるいは製作マニュアルを読む方に、役立つよう作りました。 クラヴィコードの各部分のほとんどの名称や、製作に使用する工具等の名称について説明しています。 希望の方にコピーを差し上げます。内容についてお気付きの点がありましたら、御一報下さいます様お願いします。 次の改版時に盛り込みます。
3. type II クラヴィコード製作中
今まで製作していたクラヴィコードは、現存するフーベルトのクラヴィコードの中では比較的小型の、エジンバラ大のラッセルコレクションにあるものをベースにしていました。 これは楽器の全長は125cm程でした。 今回、設計したものは現存するフーベルトの楽器では、より一般的な、140cmの長さの大型のフレッテッドの楽器です。 これを typeII と呼ぶ事にします。 より詳細には、1784年のもので、現在ベルリンの Musikinstrumenten-Museum にある楽器をモデルにし、1991年に Horst Rase が描いた図面を参照しています。 ただし、フーベルトの他の楽器の図面も参考にしました。 また、図面より次の点は変更しました。
(1)弦長について 図面のブリッジによると、中高音の一部の音域において、弦の張力に少しばらつき(同じ太さの弦を張った場合の)が生じるのだが、これを少し均一化した。 従って、この音域で弦が切れやすい、という事が少ないはずである。 このばらつきはフーベルトが意図したものかどうか、迷うところであるが、これはごく局所的に見られることから、半分強まで修正し、ある程度均一化した。
(2)鍵盤幅について 図面では1オクターブの鍵盤が書かれているが、オクターブピッチ(1オクターブの幅)がフーベルトの他の楽器で見られる、153mm と少し異なるのだが、鍵盤の開口部は標準的であり、鍵盤幅は標準的な値を採用した。 バランスピン等のピンの位置もあまり正確とは思えなかったので、作図によりキーに関するすべての位置を取り直した。
(3)ブリッジのピンの数も正しくないので、ヒッチピンより弦をほぼ平行に描き、ブリッジピンの位置を取り直した。
(4)響板うらのリブについて 高音部への影響を少なくするため、4本あるリブの高音側の2本の位置を修正し、また、ブリッジの下を横切るリブを4本から3本とした。 ブリッジを横切らないもの、すなわち、最高音の1本はブリッジよりベリーレール側に設け、ごく小さなものとした。
フーベルトは現ポーランドのWschowaで1714年に生まれました。 フーベルトの楽器のラベルにはババリアの Bayreuth の地名があり、また、Ansbach に居たことも知られています。 没年は1793年です。 フーベルトの楽器を見るとOrgel und Instrumentenmacherとなっています。 フーベルトのクラヴィコードは1756年から1789年までに作られた18台が残っています。 弦を共有する、いわゆるフレッテッドの楽器が多く、しかも現存する楽器を見るかぎりでは比較的初期の3台を除いては、すべてフレッテッドの楽器を作っています。
4. typeI クラヴィコードについて
従来より製作していたクラヴィコード typeI は電車で持ち運べる様軽量化を進めます。 また、tzpeI 用専用のキャリングカバーを作りました。 2001年no6 以降、希望者に添付とします。 それ以前の楽器を利用戴いている方でも、2000年no3 以降は適応しますので御相談ください。 なお、今後の製作予定は下記貸し出し楽器の中にあります。
なお、本紙の最後には Cafe Himmel というコーナーを設けて、最近の出来事より、私見を述べます。
2.EVENTS
ネットノット(結び目)かんない
根岸線関内駅より、関内さくら道りを港の方へ徒歩2分です。 途中、大道りを横断し、その少し先で、駅を背にして左側です。 1階がユーロファイルというイタリアンレストランで、そのビルの5階にあります。 関内さくら道り、は桜木町よりの出口を港側に出て、ホームに沿って、ほんの少し石川町方向に歩いた所にあります。 「関内さくら通り」と書いた案内板が立っています。
[楽器詳細]
フレミッシュヴァージナル C 〜 c3 ミュゼラータイプ a = 415Hz
フレッテッドクラヴィコード C 〜 f3 または g3 a = 440Hz
1時間1000円 1時間単位。 要予約
教室内の楽器が自由に使えます。 アップライトピアノもあります。
問い合わせ/予約
携帯 070-5135-2463 または 070-5135-2463@em.nttpnet.ne.jp 地球音楽園
あるいは 0467-24-6796 佐野清彦
〜〜〜〜〜 音楽の隠れ家シリーズ 〜〜〜〜〜
ペダルクラヴィコードによるバッハ
2002年 2月17日(日) 午後2時30分〜3時45分
ペダルクラヴィコード/クラヴィコード 大塚直哉
於 絹ヶ丘一丁目会館 八王子市絹ヶ丘1ー5ー7
ご一家で500円程度のご支援を賜われれば幸いです。
[program]
J.S.Bach J.S.バッハ
フランス組曲第5番 BWV 816
オルガントリオソナタ5番ハ長調BWV529
おお愛する魂よ、汝を飾れ BWV654 他
ペダルクラヴィコードには、フレッテッドの楽器2台を重ね、下段の楽器がひもでペダルボードに接続された、比較的簡易な物を使用します。 本コンサート終了後は、ペダルクラヴィコードおよび、新作クラヴィコード(フーベルトの大型のフレッテッドモデル)の展示と試奏の会となります。
参加自由、無料 午後17時30分まで。 クラヴィコードでお弾きになる曲をお持ち下さい。
問い合わせ 八王子市絹ヶ丘1ー38ー1 山野辺暁彦 tel & fax 0426-35-3784
新作クラヴィコード展示 試奏の会
2002年1月20日(日)
午後1時00分〜4時00分
於 ネットノット(結び目)かんない
展示楽器 typeIIフレッテッドクラヴィコード
問い合わせ 山野辺暁彦 tel 0426-35-3784
この関内スペースで、新作クラヴィコードの展示と試奏の会があります。
デモ演奏を1時30分と3時00分に20分程度予定しています。 当日、これ以外の時間は自由に試奏できます。 予約不要です。 直接会場へお越し下さい。 (無料)
3.貸し出し楽器
現在、貸し出し可能な楽器、貸し出し予定の楽器は次のとおりです。
1. Double fretted clavichord 18th century German model2001 no5 typeI C ~ f3 キャリングカバー付 牛骨ナチュラルキートップ
11500円/月
2001 no8 typeII concert grand C ~ g3 1月下旬 牛骨ナチュラルキートップ
12500円/月
2002 no1 typeII concert grand C ~ g3 3月ごろ
未定
2. Unfretted clavichord a = 392 Hz GG - f3
9500円/月
3. Chamber organ 8' 4' mixture(2' + quint ) C ~ d3 with feeder bellows by foot 86kg
4. Positive organ 8' 4' (treble) F - d3 with feeder bellow by foot 50kg
20000円/月
6. Italian virginal BB~c3 after Marco Jadra 1568?
12000円/月
7. Italian harpsichord B ~ d3 8' 192cm
9500円/月
8. Flemish virginal C ~ c3
9500円/月
9. English bentside spinet early model BB ~ f3 415-440 2002年3月頃
12000円/月このEnglish Bentside spinet は南アフリカ在住の Selway Robson 氏製作のものです。非常に小型で軽い楽器ですが、音はダイナミックで、氏の小型の楽器へのこだわりが現れている様に思います。
4.Books on musical instruments(楽器についての本)
ここ数年で入手した本です。 自由に閲覧ください。
You can visit my library in Hachiouji . Please feel free to visit.
Ringve Museum Trondheim Utgitt av Ringe Museums Venner
Makers of the Harpsichord and Clavichord Donald Boalch 1956 (first edition)
Clavichorde Hubert Henkel
Early Keyboard Instruments Philip James 1960 reprint of 1930
The clavichord Bernard Brauchli
Kielklaviere Staatliches Institut fuer Musikforschung Preussischer Kulturbesitz
Tasteninstrumente des Museums Staatliches Institut fuer Musikforschung
Catalogue of Early Keyboard Instruments at Fenton House
oude klavecimbels hun bouw en restauratie/ old harpsichords their construction and restoration
Violes, violins and virginals The Hill collection of stringed instruments at the Ashmolean Museum, Oxford
Fabio Colonna La Sanbuca Lincea overo dell'istroment musico perfetto (harpsichord with 31-key octave)
Koen Vermeij The Hubert Clavichord Data Book
Royal College of music Museum of Instruments Catalogue II keyboard Instruments
The Russel Collection of Early Keyboard Instruments 1968
Catalogus Muziekinstrumenten Museum Vleeshuis Antwerpen
Salzburger Klaviere Klaviere im Salzburger Museum Carolino Augusteum
Early keyboard instruments The new Grove musical Instruments series
Harpsichords Clavichords Organs Harmoniums Haags Gemeentemuseum 1989
Oxford companion to musical instruments
A Handbook of Histrical Stringing Practice for Keyboard Instruments 1991
Catalogue of MIM(Musical Instruments Museum) Brussels
The Cambridge Companion to the Organ
The History of English Organ
Three Centuries of Harpsichord Making Frank Hubbard
Hurdy-Gurdy Method Doreen Muskett
Musical Instruments as works of art Victoria and Albert Museum
Syntagma Musicum II De Organographia (English)
Die Botschaft der Musik 1000jahre Musik in Oesterreich
The Royal College of Music Museum of Instruments Catalogue Part I European wood Instruments
Catalogue of Musical Instruments volumeII non keyboard instruments Anthony Baines
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5.Hubertgasse (フーベルトガッセ)
第2回は「キーの働き」についてです。 クラヴィコードのキーは基本的にはタンジェントで弦を突き上げれば良いのですが、キーの削り方により音が大きく変わります。 クラヴィコードのキーは、ちょうどヴァイオリン等の弦楽器の弓に相当します。
Today I would like to explain how the key of the clavichord works to the sound. I did not understand how important the key is on the clavichord. You will know that a key is not only a lever to let the tangent push the strings up.
2. WHAT IS A KEY?
You may know that the key of the clavicdhord is designed to push the strings up with a tangent. When you push a key with your finger the opposite end of the key goes up and the tangent on the key attacks the strings. This simple movement is the work of the key. But ...
I first understand that the key balance is the only important, because in some cases the key balance is not always good unless you put some lead waight on the keys. But it is not enough.
My idea is that a key of the clavichord is a bow of stringed instruments such as violin viola cello, or a hammer of dulcimer. You may think that it is the same with harpsichords. Yes. the keys of the harpsichords work the same with clavichords, and the keys are also important on the harpsichord. You will at once recognize if it is a light and good balanced key or not, on a harpsichord. But on the harpsichords there is an action between the key and the string. There are felt between the key and the jack, free space between the felt and the jack,a jack,tongue pin,tongue, and plectrum. On the other hand clavichord has no action between the key and a string. There is only a tangent. This fact presents us a great defference between harpsichord and clavichord. When you play the violin, there is only a bow between you and the string. So you need a very a good bow. Let's think about what is a good bow. You may ever tryed no-exellent bow which looked fatter than normal bow made in softer wood. The fat bow has enough strength but it has too much mass out of the center of the bow. These mass vibrate itself randomly. These vibration is the disturbance of good sound. Of course you cannot see the vibration. So, let's thik that when you drive a car, you may find a little difficulty if you have a very big man sitting in the back seat on the left or right. Mass apart from the center of the car makes you difficult to drive especially when you turn to the left or right. The same thing happens on the bow with much mass apart from the center. So is the key of the clavichord. The key of the clavichord is not made in hard wood but it must be shaped up to the limit too. On the clavichord, the part which should be shaped up is an area between balance pin and tangent, and an area between balance pin and key front which is shown below. These parts have more than enough strength and have too much mass apart from its center if it is not shaped up. You will notice this at once when you play a good clavichord with shaped-up keys. You will feel the atack clearer with these keys.
6.Cafe Himmel
昨年から始めた八王子のチャペルコンサートは、多くの方に励まして戴いて、すでに2回行う事ができた。 我が家に置いてあると、このオルガンは、そう大きな音ではないのだが、チャペルへ持っていくと、すごい事になる。 本当にこの小さなオルガンが鳴っているのですか、と何度も聞かれる。 そこに居合わせた人すべてに十分豊かな音量で響く。 建物の中が音で満ちている、という体験である。 足でフイゴを踏んで空気を送っているのだが、ほんの僅かな音のゆらぎが、かえって自然に感じられる。 人間から与えられたエネルギーだけで、音がでている、という心理的要素もあるのかもしれない。 音が、そして音楽が、何も無いところから、生まれる現場に居合わせたという感動もあるのだろう。 スイッチを入れて、モーターが回りだし、空気を大量にウインドチェストへ送り込んで、風圧が自動調整され、いつでも音が出ますよ、という状態から、音がでるのとは何が違うのだろう。 オルガンに限らず、私達は、ほとんど同じだから便利な方を取る、と考えて来たのだが、便利さを優先して、失ったものも多いだろう。