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Clavichord type I with pulldown pedal C~f3
英国エジンバラにあるChristian Gottlob Hubertの1784年のクラヴィコード(C~f3)を基に、ほぼそのままの寸法で製作し、その楽器にプルダウンペダルボードを付け加えたものである。 エジンバラにあるオリジナルについて補足すると、この楽器は素晴らしいものには違いないが、次の点で他のフーベルトの楽器と異なっていて、やや例外的な感がある。
1. 現存する楽器を見る限り、おそらく1781年以降、フーベルトは主に全長140cm、音域C~g3の楽器を続けて作っているが、この楽器は128cmと小型であり、音域も狭い。
2. 少なくとも1781年以降の楽器はケースに松を使い、突板等で仕上げているが、この楽器のケースはさくら、ウォルナット等の固い広葉樹で出来ていて、その木目が見える仕上げである。 このため角に組継が見えている。
Clavichord type II C~g3
フーベルトが1784年に作った全長140cmの楽器を、図面を頼りに作ったものである。Clavichord type I with pulldown pedalのところで述べたように、このタイプがフーベルトとしては一番台数の多いタイプと思われる。製作に当たっては、キーをメノウで磨き、弦を突き上げるタンジェントも板状でなく、断面が楕円に成るよう立体成型して作っている。
Clavichord type III 4 oct. C~c3
ライプチヒにあるJohann Jacob Donatが1700年に作ったクラヴィコードを基に製作した。この楽器の大きさは前記Clavichord type Iとほぼ同じだが、弦の張力が全く異なる、つまり弦はとても弱く張ってある。このためフーベルトの様なダイナミックさは求めようがない。この楽器は高さが8.5cmしかなく、ふたを付けた痕跡もない事から、もしかするとオルガン練習用2段クラヴィコードの下鍵盤だったかもしれない。 足鍵盤用のクラヴィコードの上に、立派な装飾付のアウターケースに2台の手鍵盤用クラヴィコードが収められていたのかもしれない。clavichord type Iと同じく、この楽器もダブルフレッテッドだが、フーベルトがdとaを他のキーと弦を共有しない専用弦としているのに対し、この楽器では基本的にはeとaを専用弦としている。このためdとdisが共有関係になる。ただ、一部不規則なところがある。
Italian harpsichord after Gregori 1726 C~d3 415-440
すべて真鍮弦 イタリアのチェンバロは、16世紀までは鍵盤楽器と言っても、ギターあるいはリュートに鍵盤を付けたような軽いものだったと言われることが多い。これが外箱、outer caseに収められ、ふたはこの外箱に付けられた。絵や装飾も主にこの外箱に施される。しかし、18世紀になるとfalse inner-outerと呼ばれる、しっかりしたケースに直接ふたが取り付けられる形態となる。 全体としては、この方が製作は容易だが、16世紀、17世紀と続いた弦楽器的な鋭い立ち上がりはやや失われるようだ しっかりしたケースのなかで響板だけが鳴るために、音が膨らみ、また、長く伸びることになる。また、これがこの時代の要求でもあったのだろう。
Iron strung Italian harpsichord based on Grimaldi 1695 GG~d3 415-440
弦長から、オリジナルのグリマルディはすべて真鍮弦が張られていたと思われる。テオルボにおいてCより下の音が必要とされていた様に、チェンバロにおいても、通奏低音においてCより下の音が求められたのだろう。また、ルイ・クープランにおいてもCの下のAAがでてくるが、このような低域を必要とするチェンバロソロの曲は、もともと通奏低音用イタリアンチェンバロを想定して作曲されたのかもしれない。 今回は、オーケストラの中や、あるいはフランス音楽でも使いやすいよう最低音のいくつかを除き鉄弦とした。また、ボックススライドを用い、ジャックの入る穴、並びにバランスピン、チューニングピン、ブリッジピン等のすべての穴は、様々な方法を用いて焦してある。
Italian polygonal virginal HH~d3 415-440-446 すべて真鍮弦
ロンドンのVictoria and Albert MuseumにあるQueen Elizabeth virginalsと呼ばれているものに基づいて作ったものである。このオリジナルは同館の説明書では1570ごろベニスでつくられた、となっている。写真の楽器は、とても固い針葉樹を厚さ3mmにして側板に用いている。多角形であれば側板が薄くても並行面がほとんどないので、ウルフが出にくい。
Italian harpsichord in outer case C/E~f3 415すべて真鍮弦、 bird quill(白鳥)
写真で見えている部分が外箱である。これは20世紀の付加物だが、中身(inner case)のチェンバロは20世紀にイギリス見つかった、かなり古い小型イタリアンチェンバロである。響板、キーボード、ジャックは20世紀のものである。なお側板、レストプランクはオリジナルと思われる。現在は8’+8’だが、かつて8’+4’だったことを示す4footのチューニングピン穴がある。また、ネームボードにはVINCENTIUS PRATENSIS IDLXXXXIIIIと書かれているが、他のケース部分より少し新しく見える。(これも試奏出来ます。)
Portable virginal, quint-pitch spinet and octave spinet
一番下が昨年より作り始めたポータブル・ヴァージナル、その上が5度高いスピネット、一番上がオクターブ高いスピネット。この三つを、実音で同じ高さの音のキーが縦に並ぶように位置を合わせると、こんな風になる。もちろんカプラーは無いから、真ん中の5度高いスピネットは単独で使うことになるので、曲の途中でそこへ移る時は注意を要する。
Small chest organ F-d3 F-d3 8’ + 4’(中央のドより上のみ)
足踏み式小型パイプオルガンである。ポジティブオルガンの中では最軽量級であろう。8’ 木管(閉管) 4’ 木管(開管)
Virginal portable non musuré ver. 3 C,D~c3 415 bird quill(白鳥)
Prélude non musuréがその場にふさわしい音楽を提供できるなら、楽器もそのときある材料で最良のものは出来ないかと、作り始めた携帯ヴァージナル。今回は全長138cm、本体重量は9.8㎏だった。キャリングキット(クッション付手提げケース、キャリー)が付属しているので、少々大きいが本体だけならどこへでも持ち運べる。なお、グリマルディと同様に、すべての穴は焦してある。
last updated: 2013.12.02
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