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Clavichord Glossary
(Japanese)
クラヴィコード用語集
(カナ表記/日本語50音順)
last updated: 2008.04.27
「クラヴィコード英和用語集」の項目で日本語の定訳があるものはその日本語の、また定訳がないものは英語のカタカナ読みの50音順に配列したものです。項目説明は「クラヴィコード英和用語集」と同一です。今後、項目および内容を充実させていく予定です。
アーケード
arcade
鍵盤楽器においては、ほとんどの場合、キーフロント、つまり、ナチュラルキーの前面に施されたアーケード状の装飾を指す。これは3mm程の厚さの板に、回転する刃物で彫り込みを入れて作られる。アーケードでない装飾として一般的なのは、皮に型で凹凸を付けたものが用いられる。
アイボリー
ivory
象牙(ぞうげ)
足鍵盤(あしけんばん)
pedal board
オルガンやクラヴィコードに付けられる足鍵盤。→プルダウン
アッパーモールディング
upper moulding
ケース上部のモールディング
アンフレッテッド
unfretted
弦を共有す フレッテッドfretted に対して弦を共有しない楽器を アンフレッテッドと呼ぶ。
インスクリプション→製作者のラベル
ウエイト→リードウエイト
ヴォイシング→整音
ウォールナット→胡桃(くるみ)の木
ウッドクランプ
wood clamp
木製のクランプ。日本でも最近よく見かけるが、金属のクランプよりも広い面積をしっかり押さえるので、木工作には良いだろう。クランプについては clamp 参照。
ウッドスクリュー
wood screw
木ネジ
エッジング
edging
響板等のへり等に付けられる飾り板。彫られたものは moulding と呼ばれる。
エボニー(黒檀)
ebony
真っ黒な木であり、キートップによく用いられる。
オーク(楢の一種)
oak
固いのでヨーロッパでは家具に良く使われる。クラヴィコードのスタンド等で用いられる。
オーバースパンストリング
overspun string
ワウンドストリングwound string に同じ。ワウンドストリング には クローズワウンドclose wound とオープンワウンド open wound がある。
オープンワウンド
open wound
クローズワウンドclose wound のところで述べている様に、巻き弦の一種であり、ギターの低音弦の様に、芯線のまわりに巻き線があるのだが、巻き線が密でなく、間隔を開けて、荒く巻いてあるもの。基本的に、巻き弦は弦の強度は芯線だけがもっている。しかし、弦の質量は芯線の質量と巻き線の質量よりなるので、楽器の低音部において、より短い弦長で芯線に適切なテンション(引っ張る力)をかける事ができる。もちろん、弦に適切なテンションがかかっていないと良い音がしない。
オクターブスペーシング
octave spacing
オクターブピッチとでも呼ぶと分かりやすいだろうか、1オクターブの鍵盤の幅。クラヴィコードでも、オクターブの幅は国により、時代により異なる。
オッタビーノ
ottavino
1オクターブ高い音を出す楽器を一般にオッタビーノとよぶ。
かガイドピン
guide pin
バックピンに同じ。
架台(かだい)
trestle stand
楽器のスタンドで、組み立て式の比較的簡易なものをこう呼ぶ。
カットオフバー
cut-off bar
もともとは(チェンバロの)響板の振動する部分としない部分に分けるものという意味。クラヴィコードでは響板の裏面の、ブリッジの手前のあたりに取り付けられる。また、クラヴィコードでは、カットオフバーはリブ( rib)と同じく、響板の変形を防ぐためと、より大きな面積を同時に上下振動させる目的があるものと思われる。ブリッジを横切る大きなリブが何本かあり、カットオフバーが無いクラヴィコードもある。しかし、多くのクラヴィコードにはカットオフバーがあり、響板の面積がある程度大きいと必要となるのだろう。
カバードストリング
covered string
ワウンドストリングに同じ。
キー
key
鍵盤を構成する一つの鍵。鍵盤を、指で押した時に、バランスピンを支点として、動く一つの部品。キーの手前には黒檀等のキートップやキーフロントが張られている。
キーウェル
key well
キーボードのために楽器の前面が一部低くなっているところ。鍵盤のまわり。
キーカバー
key covers
キートップ と同じ。
キーディップ
key dip
キーを押した時に沈む深さ。キーの一番手前が最も大きく沈むので、一番手前の沈む深さを指す。
キーテイル
key tail
キーヘッドと一緒に用いられて、ナチュラルキーの、シャープキーの横に位置する、幅の狭い部分を指す。ナチュラルキーはヘッドとテイルで幅が異なる。このためキートップの材料を有効に使うために、ヘッドとテイルに分けて切り出し、張り付ける事が多い
キーピン
key pin
バランスピンおよびバックピンのこと。
キーフロント
key front
キーの前面、あるいはそこに貼られたもの。凹凸を付けられた皮やアーケードが施された木が張られる。
キーヘッド
key head
ナチュラルキーの手前部分、つまり、シャープキーの手前に位置する、幅の広い部分。シャープキーの横に位置する幅の狭い部分はキーテイル key tail と呼び区別する。ナチュラルキーはヘッドとテイルの2枚の板で作ると、材料が無駄にならない。
キーボード→鍵盤
キーボードブランク
keyboard blank
キーを切り出す前の板。この板は木目の方向をキーの方向とするために、キーの長さの板を何枚も横に張り足して作る。シナの木(bass wood)が使われる事が多い。blank は空白のという意味から、ここでは未加工の、という意味で使われ(ここまでは辞書にのっている)、それが名詞化したもの。
キーモーティス
key mortise
キーにあけられた穴であり、バランスピンを中心として、キーが上下に動くように、キーの上面で細長くなっている。この穴はバランスピンの太さの穴を開け、キーモーティスパンチkey mortise punch と呼ばれるくさび状の金属の道具をかなづちで叩いて、広げて作る。バランスモーティスbalance mortise と呼ばれる事もある。
キーレバー
key lever
キー(key)とほぼ同じだが、キーからキートップを除いた、キー本体を指している事が多い。キーボードという言葉と異なり、キー単独ではあまりなじみがない。このため、キーボードを構成する1本のキーを表現する時は少し慎重になり、キーレバーと言う事もある。また、キーと言っただけでは、普段チェンバロ等で見ているキートップの張られている部分だけを指している、と誤解される面もある。
響板(きょうばん)
soundboard
弦の振動がブリッジから伝えられ、振動する薄い板。響板には柾目の針葉樹が用いられる。響板には、ほとんどの場合、スプルースが用いられる。響板の厚さは均一で無い事が多い
キルンドライド
kiln dried
人工乾燥した
クォーターソウン→柾目にとった、柾目の
クォーターソード
quarter sawed(米)
クォーターソウンに同じ。
クォータード
quartered
クォーターソウンに同じ。
クラヴィコード
clavichord
ラテン語のclavis (キー)+chord(弦)であるから、もともとは弦を用いた鍵盤楽器という意味である。イタリアでは16世紀終わり頃まではスピネット等に対してもクラヴィコルド clavichordo と呼ばれているそうだ。この時、われわれの意味するクラヴィコードを指してはモナコルド monachordo と呼ばれる。従って、記述上 monachord と書かれているものが、モノコルドなのかクラヴィコードなのかは文章の時代、場所、文章の内容によって判断しなければならないようだ。この monachord はいろいろなスペルで記述されている。
クランプ
clamp
木材等を接着する時に押さえる道具。金属のものはネジの原理で大きな力がでる。クランプで押さえる、という動詞にもなる。金属製のものは日曜大工の店で色々な大きさのものを売っているが、局部的に大きな力がかかるので、場合によって、当て木をする等の工夫が必要である。
グルー(接着剤、膠)
glue
接着剤としては現在考えうるものには、国産の木工用ボンド、米国フランクリンFranklin International 社のタイトボンド(Titebond)、それに伝統的な膠(にかわ)がある。音に関して一番好ましいのはもちろん膠である。強度から言うとタイトボンド、という事になるだろう。また、タイトボンドは国産の木工用ボンドより、乾いた時に固くなるため、楽器製作によく用いられる。
胡桃(くるみ)の木
walnut
ある程度固い木であり、木目がきれいな事から、楽器のケース等に使われる。
クレストライン
crest line
ブリッジの一番高いところを指して用いられる事がある。頂上となる線。ブリッジピンはこの頂上よりわずかに左側、つまりキーのある側に立っている。
クローズワウンド
close wound
ギターの低音弦の様に細かく、巻弦どうしがくっつく様に巻かれたもの。これに対して、巻弦の間に隙間があるものは オープンワウンド と呼ばれる。クラヴィコードの低音弦に使われるとすれば、主として オープンワウンドの方である。→オープンワウンド
クロスブレース
cross brace
大型のクラヴィコードでは底板の変形を防ぐために、縦に(奏者から見て手前から奥へ)ブレースが底板へ接着されているものもある。ベリーレールもこのような働きをしている。
ゲージ
gauge
弦の太さ。直径がmm あるいは インチで表される。インチの時は1000分の何インチと表示される事が多い。
ケース
case
クラヴィコードを形成する外側の箱。クラヴィコードでは四角いケースのものが多い。前面を ケースフロント、後面をスパイン 、両側を ケースサイド と呼ぶ。つまり、ケースは楽器自体を指している。楽器を入れるもの、という意味ではアウターケース outer case と呼ばれる。
ケースウォール
case wall
ケース を構成する各板。クラヴィコードは四角いので、主として4枚の板から成る。これ以外に、同じケース材から作った方が良さそうなものとしては チーク、ネームボード、ツールボックス、ツールボックスリッド がある。
ゲブンデン
gebunden
フレッテッドを意味するドイツ語。アンフレッテッドはドイツ語では ブントフライbundfrei である。
鍵盤(けんばん)
keyboard
キー全部および、キーが乗っているバランスレールやバックピンレールやラックレールを合わせてキーボードと呼ぶ。ただし、クラヴィコードではチェンバロの様にキーボードは独立して、引き出せるものではなく、バランスレールとバックピンレールは結合されておらず、それぞれ底板に接着されている。接着される理由については、バランスレール 参照。
弦(げん)
string
クラヴィコードでは真鍮弦が用いられる事がほとんどである。弦のメーカーはその弦がa=440Hzのときのc2(中央のドの1オクターブ上のド)の弦長の最大値を公表している。この最大値は255mm 前後であろう。ただし、少量取り寄せて、実際にある長さで、ある音を出してみて、十分余裕があるかテストする必要があるだろう。いずれにしても、自分で設計したり、図面を取り寄せて、作る時は弦長を十分検討しなけらばならない。低音域では弦長が十分取れないので、真鍮より柔らかい、レッドブラスが使われる事もある。また、低音部には巻弦が用いられる物もある。
コース
course
クラヴィコードでは基本的に弦は2本が一対であり、タンジェントでこの一対を同時に突き上げる。この一対をリュートにならってコースと呼ぶ。低音部等で、1オクターブ高い弦が加わり、3本を同時に突き上げれば、その3本が一つのコースである。
コーナージョイント
corner joint
(主としてケース四隅の)接合部、あるいはその接合のさせ方。
コニファー(針葉樹)
conifer
松や杉等の針葉樹全般を指す。
さサイドドラフト
side draft
弦がブリッジのところで、ブリッジピンによく接触するよう、よこ方向に角度をつけてチューニングピンへ至ること。 この角度が強すぎるとブリッジや響板に余計な負荷をかける。少なすぎると、弦がブリッジピンによく接触しないところが出てくる。
サイプレス(糸杉)
cypress
キプロス島のキプロスが語源である。杉の一種である。
サウンドボード→響板
サウンドボードサポート
soundboard support
ライナー (liner) と同じ。
サウンドボードモールディング
soundboard moulding
響板まわりのモールディング。
シダー(杉)
cedar
杉と言っても種類はいろいろである。チェンバロ、ヴァージナルより類推すれば、初期のイタリーのクラヴィコードには、杉の一種が使われていると思う。
シノワズリー[仏語]
chinoiserie
漆塗り。クラヴィコードにも少しだが、漆塗りのものがある。
手鍵盤(しゅけんばん)
manual
足鍵盤に対して通常のキーボードを 手鍵盤と呼ぶ。
ジョイント
joint
接合部。→コーナージョイント
ショートオクターブ
short octave
鍵盤上は最低音がEであるが、これをCの音とし、F♯キー、G♯キーをそれぞれD、Eに調律したもの。16世紀や17世紀初頭の楽器では、このような楽器が多かった。これを、C/Eと書かれる事がある。これはCの音がEのキーで出る事を示している。また、少し後の時代に、鍵盤上はBB(中央のドより2オクターブ下のドより1音下のシ)であるが、これをGGに調律し、C♯キー、D♯キーをそれぞれAA、BBに調律したものもあったそうだ。同様に、GG/BBと書かれる。
スケール
scale
「弦長」の事だが、ギターの様に弦長は一定ではないので、c2(中央のドの1オクターブ上のド)の長さを指す事が多い。もちろん、弦長とは弦が振動する長さ、いわゆる スピーキングレングスspeaking length の事である。これは、クラヴィコードではタンジェントから、ブリッジまでの長さである。スケールscale が決まると、それよりオクターブ高い弦の弦長はその2分の1。それよりオクターブ低い弦の弦長はその2倍。それより、半音低い弦は2の12乗根倍の長さとなる。ただ、低音部ではこの理屈で行くと、非常に長くなり、楽器が大きくなってしまうため、必要な長さを取らずに少々短かめとなっている。低音部にのみ巻き弦が用いられるのはこのためである。なお、scale (c2 の長さ)は真鍮弦ではa=440Hzの楽器を作るのであれば、250 mm前後が適正であろう。
スチールウール
steel wool
台所で使用するものと同じ。楽器のろくろを引いたスタンド等、曲面をみがくのに、用いられる。これで木をこすると、紙やすりのかわりに使える時もあるが、細かい鉄のくずが目につまることもある。
スティフナー
stiffener
丈夫にするもの、硬直させるもの、という意味。鍵盤の下で最も手前の位置に、底板、前面の板の両方に接着されている補強材、あるいは底板に接着された補強材等を指す。brace とあまり明確には区別されていない様だ。
ストリップ(細長い板、角材)
strip
strip of wood とか paper strip 等細長い物を指す。
ストリンギングテーブル
stringing table
どの弦にどの太さの弦が用いられるべきか書かれた表。弦が真鍮線だけでない場合は、ブラスとレッドブラスの別、あるいは巻き弦の種類を示してある。
ストリンギングリスト
stringing list
ストリンギングテーブルに同じ。
ストリング→弦
スパイン
spine
背骨という意味。クラヴィコードでは、四角いケースの4面すなわち、前面、後面、両側面のうちの後面を指す。ヴァージナルでも同様、奏者の反対側の面がスパインと呼ばれる。チェンバロでは最低音の弦に沿った最も長い側面を指す。スパインは他の3面よりも、弦の張力がかかっている。
スピーキングレングス
speaking length
弦が振動する、タンジェントからブリッジまでの長さの事。通常、単にこれを弦長と呼んでいる場合が多い。
スプリットアクシデンタル
split accidentals
シャープキーを手前と奥に分けて、違う高さの音を出せるようにしたもの。チェンバロでこのようなキーを御存じの方もあるだろう。この目的は2つある。一つはショートオクターブ short octave のところで述べた様にショートオクターブにしたために、無くなってしまったシャープキーの音を復活させるものだ。例えば、C/Eのショートオクターブでは、無くなってしまった、F♯やG♯等を復活させるために、F♯キー、G♯キーのそれぞれ手前をD、Eに、奥をそれぞれF♯、G♯に割り当てたものである。この場合はスプリットキーは最低音のオクターブのみに現れる。もう一つは、実例としは少ないが、例えば、d♯キーとe♭キーを分けて、異なる音程が出せるようにしたものである。ミーントーンから離れて、いわゆるwell-tempered に移行する過程で無くなってしまったと思われる。
スプリットシャープ
split sharps
スプリットアクシデンタルに同じ。
スプルース
spruce
スプルースは松の一種であり、クラヴィコード、チェンバロ、バイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ等ほとんどの楽器の響板に使用されている。響板は楽器の心臓部であるため、特に良い木が使われる。なお、スプルースは日本のえぞ松の一種とほとんど同じであるらしい。
図面(ずめん)
drawing
詳細な図面を指すことが多い。
スロット
slot
溝の事だが、クラヴィコードに一番関係するものは、ラックに彫られた溝だろう。→ラック
整音(せいおん)
voicing
クラヴィコードのボイシングは、まず、すぐに出来そうな点としては、タンジェントの上面の弦に当たるところをやすりできれいにして、弦とタンジェントが一点で接触するようにすること、弾いた時、タンジェントの上面で弦が転がらないよう、タンジェント上面の角度をやすりで調整すること、あるいはリスティングクロスを適切に配置して、タンジェントと弦の接触を改善する事等である。さらに、キーのバランスピンより向こう側の上面、および、キー下部の全体を適宜削る事も大きく音に関係する。この様にキーを削って、不要な部分が無くなるとタンジェントと弦の接触も改善される。
製作者(せいさくしゃ)のラベル
inscription
クラヴィコードでは、チェンバロの様に、いわゆるネームボードに銘を刻まずに、バイオリンの様に、紙に記述して、ヒッチピンレールの低音部、最低音のキーに近いところ等、ちょっとのぞくと見える位置に張り付けたものが多いらしい。
西洋梨(せいようなし)
pear
beechと同様、固いのでブリッジ等に使われる。
セクション
section
断面図、断面
たターンド
turned
ろくろを引いたという意味。turned stand の様に用いられる。
ダイアゴナルブレース
diagonal brace
底板に対角線状に付けられた補強材。単にブレースと呼ばれることもある。補強材については呼び方がいろいろある。
ダウエル→ダボ
ダブルフレッテッド
double fretted
一般に、クラヴィコードにおいては、キーを押すと、タンジェントが、同じ音の高さの2本の弦を同時に突き上げる 。最大2つのキーで、この一対の弦を使用する場合、そのクラヴィコードはダブルフレッテッドである、と言う。クラヴィコードでは弦が横に張られているので、同じ弦でもタンジェントで突き上げる位置が異なれば、異なる音程の音を出す。例えば、c のキーと c# のキーで同じ弦を使うのである。この時、c# キーのタンジェントは、c キーのタンジェントより、半音だけ高い音になるように、同じ弦の、c キーより少しブリッジ寄りを突き上げる。クラヴィコードは基本的には、このように弦を共有するものだが、18世紀になってから、弦を共有しないものが出てきた。→アンフレッテッド
ダボ
dowel
固い木より、直径数ミリから1cmくらいの円筒形に切り出されたもの。表面には接着剤が良く流れる様に、多くは、ら旋状に溝が彫られている。木と木を接合する場合に、その両側に穴を開けて、ダボを通して接着する、という事が必要に応じて行われる。
タンジェント
tangent
弦を突き上げる真鍮片。真鍮板から、細長い二等辺三角形に切り出したものが多い。タンジェントは、キーに明けた穴にカナズチ等で叩き込まれる。ただ、この方法だと、キーをさらに打ち込む事はできるが、少し引き抜くと、十分固定されないため、薄い木片を挟んで再度叩き込む必要がある。なお、キーに穴を貫通させてしまうと、タンジェントに伝わった振動が中途半端にキーに伝わり、タンジェントの最下部で折り返してきた、振動と干渉して音が悪くなるはずである。キーにタンジェントの穴を開ける時は、貫通させずに、タンジェントの最下部がキーにめり込んで止まる様に適度な深さの穴を開けると良いと思う。なお、キーに叩き込まれる部分をまる棒とし、自由に上下の調整ができるもの、あるいは、このまる棒部分にネジを切って、回転させる事により、上下させる事ができるものもある。なお、キーの上のタンジェントを立てる位置は図面からではなく、楽器に高音部より、弦を張りながら、弦に合わせて、タンジェントの位置を決定し立てていく。
タンジェントレール
tangent rail
タンジェントの列のすぐ奥、リスティングクロスの上に配置された細長い板。弦がタンジェントに当たる所の左側が、このタンジェントレールで押さえられているので、弦があまり持ち上がらず弾きやすくなる。タンジェントレールの無いクラヴィコードもある。タンジェントレールは容易に取り外せる様になっているものが多い。なお、タンジェントレールは音に大きく影響する。
ダンパーレール
damper rail
タンジェントレールに同じ。
チーク
cheek
鍵盤の両側に位置するケースの一部。最高音では右手の小指が、最低音では左手の小指が触れそうになるところ。複数形で使われると、左右両方の チークを指す
チークウインドー
cheek window
最高音のキーの右隣のチーク下部にあけられた窓。鍵盤より下に位置し、通常見えない。なお、この位置はベリーレールとチークが張り合わせてある所だから、この窓はベリーレールも貫通して、開けられている。このチーク下部の窓は開いていないものも多い。
チークピース
cheek piece
チークに同じ。
チェリー
cherry
桜
チターピン
zither pin
モダンチューニングピンの事である。モダンチューニングピンは、もともとチターに使われていたものをチェンバロ等へ流用したものだそうだ。いまでもアメリカの人はチターピンと呼ぶ人が多いように思う。
チップボード
chipboard
小さな木のくずを固めて板にしたもの。木のように、変形しないので、工作用の台なら使う事も可能だろう。
チューニングハンマー
tuning hammer
チューニングレバーに同じ。
チューニングピン
tuning pin
レストピンに同じ。
チューニングレバー
tuning lever
調律用の道具で、チューニングピンをまわすもの。チューニングハンマーと呼ぶ人もいる。チューニングレバーは大きく分けて、マイナス穴のヒストリカルなチューニングピン用のものと、四角い穴のモダンチューニングピン(チターピン)用のものがある。どちらもピンの大きさが色々あるため、チューニングレバーも色々な大きさの穴のものがある。
ツールボックス
tool box
クラヴィコードにおいて、ツールボックスと言えば、鍵盤の左側、低音部のヒッチピンレールの手前の空き地に設けられた小物入れを意味する。
ツールボックスリッド
tool box lid
前記、ツールボックスのふた。
ディール
deal
松、もみ等針葉樹一般を指すと思われる。
底板(ていばん)
baseboard
比較的厚い板で、楽器の構成要素は全てこれに乗っている。 底板は針葉樹を2、3枚張り足して、楽器の幅にする。18世紀の高さの低い、楽器においては底板で強度を保っており、厚い板が用いられる。
ドライラン
dry run
これから木を接着しようとする時、接着剤を付けないで、正しく押さえられるかやってみること。これは接着の基本であり、クランプで押さえる場合でも、木ネジで押さえる場合でも、必ず、ドライランを行う。つまり、接着剤を付けずに、クランプ等で押さえてみて、隙間が生じないか、また、しっかりと押さえられるか、テストする。接着の予行演習。
トリプルフレッテッド
triple fretted
同じ弦を最大3つのキーで共有する事。→ダブルフレッテッド
トレスルスタンド→架台
ドローイング→図面
なネームボード
name board
ケースの一部であり、鍵盤の上部、シャープキーの後ろに位置する細長い部分。チェンバロではこの部分に楽器制作者の名前が入るので、ネームボードと呼ばれる。ただし、クラヴィコードではここに名前が入っていることはあまりない。なお、クラヴィコードにおいては、バランスレールやバックピンレールは底板に固定されているため、キーボード自体を引き出す事はできない。従って、必要な場合は、キーを1本づつ取り出すのだが、このためにほとんどの場合、ネームボードは取り外せる様になっている。従って、ネームボードは強度上、何の役にも立っていない。
はバー
bar
リブと同じ。バイオリン等の弦楽器でバスバーという名称を聞かれた方もあるだろう。クラヴィコードの響板裏の補強材をすべてバーと呼ぶ人もいる。
バークランプ(ハタガネ)
bar clamp
通常のクランプよりも長い距離を押さえられる様、長い金属の棒に木材等を押さえる仕掛けが付いている。押さえるしかけは、一方はその棒に固定されていて、ネジを回すと押さえ金具が前進する、もう一方はその棒の適当な位置に移動できるようになっていて、ネジでその棒に固定できる。この2つを適宜動かして、押さえつける。クランプ同様、日用大工の店にある。ただ、クランプと異なり、奥行の深い所の2点を押さえる事はできない。
パーチクルボード→チップボード
パーチメント→羊皮紙
バイス→万力
バスウッド
bass wood
シナの木。キーの材料として使われる、割とおとなしい(つまり、あまり曲がって来ない)木である。→キーボードブランク。なお、シナの木と呼ばれるものには種類がいくつかある。bass wood はそのなかの一つであろう。日本で言っているシナの木はこれに近いと思うが、私の知る限り同じでは無い様だ。
8フィート
eight-foot
オルガンにならって、クラヴィコードでも、通常の高さの音を出す低音から高音までの一揃の弦を8フィートと呼ぶ。これより、1オクターブ高い音を出す弦は、4フィートの弦(これは18世紀以降の楽器の低音部に付加されている事がある。)と呼ぶ。また、楽器自体が1オクターブ高い音を出す小型のものであれば4フィートの楽器である、と言う。
バックタッチレール
back touch rail
バックピンレールと同じ。
バックピン
back pin
キーの一番奥にあり、キーとキーの間に位置し、キーが左右に動かないように垂直に立っているピン。バックピンはバックピンレールに取り付けられている。→バックピンレール
バックピンレール
back pin rail
バックピンが打ち込まれている木の棒。キーの奥、キーの下に横たわっている。バックピンレールの上にはフェルトが貼られ、キーはその上に静かに乗る。ラック式のものはこれとは全く異なる構造である。→ラック
バックレール
back rail
バックピンレールと同じ。
バックレールフェルト
back rail felt
バックピンレールのところで述べた、キーが静かに乗るためのフェルト。
バッテン
batten
木片
バランスピン
balance pin
キーが上下に動くための支点となるピン。バランスレールに取り付けられている。今日、鉄の丸いピンが用いられる事が多いが、図面や写真をみると少なくとも、18世紀のクラヴィコードでは断面が楕円のものをよく見る。楕円の長い方向がキーの長手方向となっている。キーの動きもこの方が良いだろうし、音にも良いかも知れない。現代人からは些細なことに思えるが、こういう所に、当時の技術の粋が込められているのだろう。
バランスモーティス
balance mortise
キーモーティスと同じ。
バランスレール
balance rail
バランスピンが打ち込まれている木の棒。比較的高さのある楽器では、上下2枚の板より構成され、上部のみ固い木が使われている。この時はそれぞれの板を指して、 トップレイヤーtop layer, ボトムレイヤーbottom layer と呼ばれる。なお、このバランスレールは底板に接着されていて、取り出す事はできない。チェンバロと異なり、クラヴィコードでは音が鳴っている間、バランスレールはキーを介して、弦振動を支えている。従って、バランスレールも音を出すための、直接の構成要素であり、しっかりと底板に接着されていなければならない。
バランスレールパンチング
balance rail punchings
バランスワッシャー、フェルトワッシャー、ペーパーワッシャーを指している。→バランスワッシャー
バランスレールピン
balance rail pin
バランスピンと同じ。
バランスワッシャー
balance washer
バランスピンに付け、キーの下敷きとなり、キーの動きの支点となるフェルト等でできているワッシャー。バランスレールの所で述べた様に、クラヴィコードでは、キーやバランスレールまわりは音に直接影響する。チェンバロの様にフェルトで良いとは限らない。18世紀のクラヴィコードでは皮が用いられているものがある。この時はワッシャー状にしないで、細く切ってバランスピンの手前、あるいはバランスピンの両側に配置し、バランスレールに接着されている。この時はバランスレザーbalance leather とでも呼ばれるだろう。
ビーチ
beech
ぶなの木。これも、シナの木の場合と同様、ぶなに非常に近いが同じではないだろう。ブリッジ、バランスレールの上部等、ある程度固い木が必要な部分によく用いられる。
ヒッチピン
hitch pin
弦の左側をとめるピン。直径 1.5mmくらいであり、真ちゅうが鉄でできている。弦のもう一方はチューニングピンに巻き付けられる。
ヒッチピンレール
hitch pin rail
ヒッチピンが打ち込まれる木の部品。17世紀以降のクラヴィコードにおいては、弦はわずかに斜めに、つまり、少し対角線に近く張られるので、ヒッチピンレールは、キーの奥に位置するもの(高音部)と、キーの左側に位置するもの(低音部)、の2つがある。また、この2つのヒッチピンレールは、それぞれ上下2つの部材からなり、上部のみ堅い木でできていることが多い。この時は上部と下部を指して トップレイヤーtop layer や ボトムレイヤーbottom layer と呼ばれる。
ヒンジ
hinge
蝶番
ピンブロック
pin block
レストプランクに同じ。
ファイル
file
やすり
フェルトワッシャー
felt washer
丸いフェルトで、真中に穴があり、バランスピンにはめるもの。キーはこのフェルトワッシャーの上にのり、カタカタ言わずに動くことができる。チェンバロではこのフェルトワッシャーが一般的だが、クラヴィコードではキーの支点に皮が使われる事もありる。→バランスワッシャー
フォール
fall
フォールボードと同じ。
フォールボード
fall board
通常、鍵盤部分の手前のふたになっていて、演奏する時に手前に倒すもの。これはケース材の木目を生かすのであれば、ケース前面の板より、鍵盤部分の切り欠き部分(キーウェル)をそのまま使う。
ブラックウッド
black wood
私の辞書には載っていないが、黒檀 ebonyを指している事が多いと思う。
フラットグレイン(板目の)
flat grain
昔の日本家屋の天井板にあるように、木目が模様にみえるもの。輪切りにした木を上からみて、幹の中心から離れた木目の接線で切ると、切った面は板目となる。
フラップ
flap
クラヴィコードにおいてはリッドフラップを指しているだろう。→リッドフラップ
プラン
plan
図面、略図
ブリッジ
bridge
響板の上にあり、弦の振動を拾うものである。ブリッジにはブリッジピンが打たれ、そこへ弦が掛けられる。beech やカエデ等の固い木で作られる。なお、16世紀のクラヴィコードではブリッジは1本ではなく、数個に別れていた。17世紀には、ブリッジはほとんどの場合、連続した1本の木から作られる様になった。上から見ると、多くはS字状をしている。そのカーブは初期のものは割と直線に近く、後期のものは大きなS字状となる。箏にならって「駒」と呼ぶ人もいる。
ブリッジピン
bridge pin
ブリッジの上、頂上のあたり、打ち込まれた、小さなピン。チェンバロより細く、また短いものがよく使われる。弦はこのブリッジピンに掛けられる。ブリッジの頂上と言っても、わずかにタンジェント側に打ち込まれている。従って、弦振動の非常に高い倍音はまずブリッジピンに伝わり、ブリッジから、響板へ伝えられる。
プルダウン
pull-down
足鍵盤がひもで手鍵盤に接続され、足鍵盤を踏むと、それに対応した、手鍵盤がひもで引っ張られ、音だ出る方式。オルガンやクラヴィコードにある。ピアノにもあるだろう。
ブレース
brace
突っ張るもの、補強材。クラヴィコードにおいては、弦の張力による変形を押さえるために底板に貼られたやや大きな角材。対角線状に置かれたものはダイアゴナルブレースと呼ばれる事もある。
フレッテッド
fretted
弦を共有している、という意味で使われる。ギターにフレットがあり、1本の弦で多くの音が出るように、クラヴィコードでも、同じ弦で2つあるいはそれ以上の音が出るようにしたものをフレッテッドと呼ぶ。→ダブルフレッテッド
ブロックボード(ランバーコア)
blockboard
集成材の両面に薄い合板が貼られたもの。これは狂いがあまり無いので、これで楽器を作る人もいる。ただし、日本のランバーコアは中央の集成材の部分が互いに接着されておらず、隙間があいている様な物が多く、あまり使えそうもない。使わない方が良い。
フロントレール
front rail
スティッフナーと同じ。
ブントフライ
bundfrei
アンフレッテッドを意味するドイツ語。これは「フレットなし band-free 」という意味であろう。フレッテッドを意味するドイツ語は ゲブンデンgebunden である。
ペア→西洋梨
ベースボード→底板
ベースボードモールディング
baseboard moulding
ケース下部に取り付けられたモールディング。クラヴィコードでは派手な装飾は無いが、このようなモールディングによる装飾が多い。ボトムモールディング bottom moulding とも言うだろう。
ペーパーパンチング
paper punching
ペーパーワッシャーに同じ。
ペーパーワッシャー
paper washer
バランスピンにはめて、キーの前面の高さを揃えるためのもの。
ペダルキーボード
pedal keyboard
足鍵盤に同じ。
ペダルボード→足鍵盤
ベリーレール
bellyrail
クラヴィコードでは、ベリーレールは響板の左端が乗る台を意味する。多くの場合、この台は直線的でなく、屈折した形である。クラヴィコードを自作しようとすると、ちょっと困難に思えるのはこのベリーレールとブリッジぐらいであろう。このベリーレールに開けられた穴は、丸ければマウスホールと呼ばれる。ベリーレールもサウンドボードサポートsoundboard supportと呼ぶ人もいる。
ボイシング→整音
ボード
board
ある程度幅のある、厚さ2インチ(5cm)かそれ以下の、いわゆる板。サウンドボード等。これより厚い板はプランクと呼ばれる。レストプランク 等。
ボックスウッド(つげ)
boxwood
世界各国につげがあるが、色や固さが異なる。表面がつるつるしているので、キートップによく使われる。現在は非常に高価である。
ボトム
bottom
→底板
ボトムモールディング
bottom moulding
ケース下部につけられたモールディング。
まマウスホール
mouse hole
演奏者から見て、響板の左端の下にあるベリーレールに開けられた穴。音はここからも出てくる。大きな四角い穴となっている場合もある。 この様なマウスホールらしくない穴は、ラットホールとは呼ばずに、単に ウィンドウwindow と呼ばれる。
巻き弦(まきげん)
wound string
芯線の回りに細い弦をまいたもの。オープンワウンドopen wound と クローズワウンドclose wound がある。それぞれの項参照。クラヴィコードで使われるのは主として オープンワウンドの方であろう。
マーケトリー
marquetry
いくつかの異なった色の木の薄い板を貼って、模様にした象眼細工。マーケトリーパネルmarquetry panel の様に用いられる。
柾目(まさめ)にとった、柾目の
quarter sawn(英)
木の幹の中心と通る板が柾目の板である。直線上に木目が並ぶ。響板にはこのような柾目の板が使われる。
マニュアル→手鍵盤
万力(まんりき)
vice
米語では vise と書く。
ミュージックワイヤー
music wire
ワイヤー と同じ。
メープル
maple
楓。固いのでブリッジ等に用いられる。
モーティス/モーティック
mortise/ mortic
ほぞ穴。キーモーティス参照。
モールディッドキーフロント
moulded key front
モールディング加工された細長い木を用いたキーフロント。このタイプのキーフロントを用いるときは、キーボードブランクを各キーに切り分ける前に、長いモールディング材をキーボードブランク前面に張り付けておく。
モールディング
moulding
細長い角材をけずり、断面が一定の形状になるようにした装飾用木材。現在、この加工はルーターあるいはトリマーと呼ばれる電動工具で行われるが、昔は特殊なカンナを作って、行っていた。最近、日曜大工の店で、このような加工をしたものを何通りか売っている所もある。クラヴィコードの正面や側面の下部に付けられているものは ベースボードモールディングbaseboard moulding あるいは ボトムモールディングbottom moulding と呼ばれる。同様にある場所によって、アッパーモールディングupper moulding、リッドモールディングlid moulding等と呼ばれる。
や羊皮紙(ようひし)
parchment
これを何枚か重ねて、ロゼッタを作る。このような羊皮紙で作ったロゼッタは、イタリアのチェンバロでよく見かける。クラヴィコードでもこの様なロゼッタの付いたものがある。
らライナー
liner
響板を乗せるためのケースの内側に接着された板。上から見て左辺はベリーレールとなる。
ライム
lime
シナの木に近く、キーボードブランクに使われる。
ラック
rack
キーの数だけ、縦に溝(slot)が彫られた板であり、キーの奥に付けられたラックタング、またはラックピンがその溝の中を上下する。ラックタングは薄い木材等で出来ており、ラックの溝を上下する。同様の目的で、板状の物では無く、金属のピンを用いていればラックピンと呼ぶ。なお、ラックタングには、現代ではすべりの良い様に、プラスチックが使われる事もある。バックピンにより、キーをガイドする方式にたいしてラック式と呼ばれる。ラック式の方が古くから用いられた。
ラックタング
rack tongue
ラック参照。
ラックピン
rack pin
ラック 参照。
ラックレール
rack rail
ラックに同じ。
リードウエイト
lead weight
なまりの重り。キーのバランスをとって弾きやすくするために取り付けられる。キーの先の方(タンジェントのある方)にキーに横から穴を開けて埋め込まれている事が多い。
リスティングクロス
listing cloth
タンジェントの左側にあって、キーから手を離した時に、弦の振動をとめるためのもの。各キーのタンジェントの左側に位置するよう、弦にからめてある。list を辞書で引くと、織りぶち、へり地、となっている。英国クラヴィコード協会British Clavichord の会報を見ても、「list を辞書で引くと・・」から始まっている。楽器の用語としてはあまり一般的ではないのだろう。ただ、クラヴィコードにおいてはこの言い方が伝統的らしい。なお、この会報では「リスティングクロスの機能は音のエネルギーを熱に変える事だ。だが、音のエネルギーはあまりにも小さいので火事にはならない。熱っかくもならない。」と言うような事が書いてあった。補足すると、リスティングクロスの表面の細かい毛羽が、弦の振動によって互いに擦れ合い、弦の振動エネルギーがその摩擦熱に置き換えられるのだ。
リッド
lid
ふた
リッドコード
lid cord
ふたを開けた状態で止めておくための紐。
リッドフラップ
lid flap
ふたの手前の部分で、ここだけを開けて弾く事ができるようになっている。音が小さいクラヴィコードと言えども、鍵盤の所だけ開けて弾ける様になっているものが多い。ふたをほとんど閉めてクラヴィコードを弾く時とは、どんな時だろう。現代、私達は音楽の場面というと、主に、練習と本番の2つの場面を思い浮かべる訳だが、どちらでもない音楽の場面があった事を示唆していると思う。
リブ
rib
響板裏の補強材であり、響板が弦の張力で下がったり、変形したりするのを防ぐ。響板全体に振動を伝える機能もあるだろう。リブは、一般に響板にのみ接着されていて、他の部分、例えばライナーには接触していない。つまり、響板のほぼ全体が、なるべく自由に振動できる様にしている。
リブレット
riblet
リブの小さいもの。特にリブと区別して呼びたい時に使用。
ループ
loop
クラヴィコードやチェンバロでは、ループと言えば、ヒッチピンに弦を引っ掛けるためによじった部分を指すだろう。ちなみに、ループを作るには、木の棒にヒートンと呼ばれる、真ちゅうか、鉄の小さなフックのようなもの取り付けた道具を用いる。
レザー
leather
皮。クラヴィコードにおいて皮が使われるのは、装飾的なものを除くと次の2点である。第一は、キーがラック式(→ラック)でなくバックピンを用いた楽器の場合で、各キーの一番奥のあたりに、キーレバーの木が直接バックピンに触れないよう、キーレバーに張り付けた皮。ここに皮があるとキーの動きが静かであり、また、音色にも多少影響する。第二はバランスワッシャーが皮で作られたもの、あるいはバランスワッシャーの代わりにバランスレールに接着された細い皮。→バランスワッシャー
レストピン
wrest pin
チューニングピン。響板の右よりにある調律用のピン。通常鉄でできていて、直径3mm 〜 5mm である。弦の左側はループを作ってヒッチピンに掛けられるが、右側はこのチューニングピンに巻かれる。このピンをしっかり支えるのがレストプランクである。
レストプランク
wrest plank
チューニングピンが埋め込まれる固い木でできたブロック。通常、上下2枚の板が張り合わされ、下部は軽い木が使われる。この下部はレストプランクサポートブロックwrest plank support block と呼ばれる。18世紀のクラヴィコードでは、レストプランクは斜の高音部分とケースの右側面に接着される低音部分からなる。この場合、レストプランクサポートブロックは高音部分と低音部分の間、あるいはその近辺に大きな隙間があり、響板下の部分つまり共鳴箱が、レストプランクの高音部分によって三角形に仕切られた、奏者から見て右奥の空間がデッドスペースとならない様にしている。
レッドブラス
red brass
弦の材料として用いられる。真鍮と同じ合金だが、銅と亜鉛の比率が異なる。銅の比率が真鍮より高く、真鍮より柔らかい。このため、チェンバロやクラヴィコードの低音部分に使われる事がある。
ローズ
rose
チェンバロやリュート等の響板上の丸い穴状に透かし彫りにされたもの、あるいはその穴にはめ込まれた飾り。クラヴィコードでは、パーチメントより作られたロゼッタがはめ込まれる事がある。教会のバラ窓に見立てて、こう呼ぶ。
ローズウッド
rosewood
紫檀系の固い木であり、キートップに使われる。
ロゼッタ→ローズ
わワープト
warped
木材などが、 曲がった、反った。
ワイヤー
wire
真鍮弦に対して真鍮線といっているようなもの。弦として用いられる前の、素材としてはこう呼ばれる。
ワイヤーディスペンサー
wire dispenser
真鍮線が巻かれたリールなどから、一本の弦を引き出してヒッチピンに引っ掛けるループを作るための道具。リールが回転する心棒と、引き出した弦を押さえ付けるストッパーがついている。ストッパーはネジで弦を適切に押さえる事ができるようになっている。これにより、弦を引っぱりながら、ループを作る事ができる。また、ストッパーは弦を皮で押さえる様にして、弦を完全に固定せず、回転だけさせる様になっている物が多い。もちろん、これは容易に自作できる。これがあると、弦が絡まらず、また、傷まず便利。弦は折り目を付けない様、注意して扱う必要がある。折り目があると、弦を張った時にそこを支点として、左右で振動してしまい、うなりが正しく聞き取れず、調律できないこともある
ワウンドストリング→巻き弦