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北とぴあ
チェンバロ・エキシビション
1997.11/29〜30
 レポート
 97.12.01

 11/29、30に北とぴあで開催されたチェンバロ・エキシビションには、内外の15の工房から、計24台の楽器が出展されました。


 このうち、11/29〜30の午後に行われた各工房の楽器紹介を聞き、また自由時間に試奏した印象を中心にレポートします。
 出展楽器をおおまかに分類すると、以下のようになります。


 この企画は、各工房に代表作を出展するよう依頼したため、大型の楽器が中心となりましたが、依然としてわが国ではフレンチ2段鍵盤が主流であることがうかがわれます。
 フレンチ2段鍵盤は概して優雅で繊細な響きを特徴とし、外見も宮廷風の装飾や彩色が施され、見た目にも大変、優雅で、日本人の趣味にも合っているのでしょう。この中で、音の面で印象的だったのは、島口孝仁氏(堀洋琴工房)の楽器(音域FF〜f3)で、タスカン(1769)に基づくものでした。完成直後らしく、まだ塗装されておらず、白木の状態でしたから、今後、塗装によって、また経年変化によって音はだいぶ変わるでしょう。
 フレミッシュでは、久保田彰氏のルッカース・モデル(AA〜d3)がよく鳴っており、同氏のフレミッシュ様式オリジナル設計の楽器(FF〜f3)も輝かしい高音とよく伸びる低音を非常にバランスよく聴かせていました。
 今回出展されたジャーマンは、3台ともクリスチャン・ツェルの楽器に基づくものでしたが、製作者の感性によって、持ち味はそれぞれ異なっていました。特に印象に残っているのは、高橋辰郎氏の楽器(GG〜e3)です。高橋氏によりますと「バッハを弾くために作った」とのことで、確かに、バッハが気持ちよく弾ける楽器です。なお同氏製作の同型の楽器を、キース・ジャレットが所有しており、バッハの《フランス組曲》、《平均律第2巻》、《ゴルトベルク変奏曲》のレコーディングに使用しています。

 柴田雄康、高橋靖志、高橋辰郎、山野辺暁彦氏のイタリアンは、いずれも、明確な発音で、それぞれ個性的な音を出していました。また聴感的には、大型の2段鍵盤の楽器よりも音量が大きいように聴こえました。

【まとめ
    1. 日本の製作家によるチェンバロは海外製品と充分太刀打ちできるレベルに達しており、しばしば海外製品をしのいでいるとさえいえる。
    2. 小型軽量のイタリアン・チェンバロは、家庭で趣味で楽しむ楽器として、また伴奏用として最適。
    3. 演奏者と曲によって、同じ楽器でもだいぶ鳴り方が異なるような印象を受ける。チェンバロのデモンストレーションは奏者の人選と、選曲が重要。


【出展製作者一覧】(50音順)

安達正浩
伊藤福一
D.J.ウェイ&M.デュコルネ(オワゾリールハウス)
木村雅雄
久保田彰
佐藤裕一
サトゥルニーノ・シスネロス
柴田雄康
島口孝仁(堀洋琴工房)
高橋靖志
高橋辰郎
デヴィッド・レイ
野神俊也
山野辺暁彦
横田誠三


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