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チェンバロ・ブックガイド

 このページでは主にチェンバロの概説書、構造、保守に関する書籍、教則本などを紹介しています。いずれも坂崎が所有しているものです。詳細については、メールでお問い合わせください。


■概説・入門書

■やや専門的な書籍・研究書


■概説、入門書

渡邊順生:
『チェンバロ・フォルテピアノ』
東京書籍、2000
ISBN4-487-79415-3
6,800円(税別)

 英文タイトルは《Early Keyboard Instruments1400-1800》となっていて、チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノに関する包括的な書。日本語の文献としてはもっとも充実したものといえます。全865ページの大著です。なお著者はチェンバロ奏者およびフォルテピアノ奏者として知られる人です。


デュフルク、ノルベール:
『クラヴサン』
白水社(文庫クセジュ623)、1978.

 チェンバロとその音楽に関する入門書として手ごろなものですが、原著の初版が1949年のため、さすがに楽器の記述などは時代遅れとなっています。翻訳は1967年の第2版に基づいているようで、多少、内容に手が加えられていますが、基本的にはほとんど変わっていません。今となっては、この本自体を「歴史的記述」として読むべきでしょう。なお著者は、わが国ではオルガニストとして知られている人です。


久保田彰:
『チェンバロメンテナンス』
東京コレギウム、1996.
ISBN4-924541-05-2

 著者はフレミッシュ・チェンバロ製作家で、その経験を活かして、実践的なチェンバロの保守について、著者自身によるわかりやすいイラストで説明してあります。チェンバロの所有者、管理者必携の本です。


野村満男:
『チェンバロの保守と調律』
東京コレギウム(c)1975

 文字どおり、チェンバロの保守と調律のための本です。楽器の歴史とチェンバロ音楽に関する著者の造詣の深さがにじみ出ているすぐれた本です。調律法はピュタゴラス音律から中全音律系の調律法が各種紹介されています。チェンバロを弾く人、所有している人がまず最初に読むべき本です。


Kottick,E.:
The Harpsichord Owner's Guide
The University of North Carolina Press, (c) 1987.
ISBN 0-8078-1745-7

 一般愛好家向けチェンバロの概説書(わが国では「専門家」にも役立ちそう)。チェンバロの原理、歴史的チェンバロの地域的特徴、楽器の選び方、メーカーの選び方、保守、調律にいたるまで、要領よく記述されています。なかなかユーモア感覚ある記述で、楽しんで読めます。(英文)


Metzger,N.:
Harpsichord Technique --A Guide to Expressivity
Musica Dulce, Portland, (c) 1989.
ISBN 0-9624934-0-6

 チェンバロ奏法についての本。18世紀イタリアのリッツィRicciの教則本からの豊富な練習曲が収められているのが大きな特徴です。また、巻末には通常偽作とされているため目にすることの少ないJ.S.バッハ(?)の小品や、リュート作品なども掲載されています。(英文)


ハリー・ハスケル:
『古楽の復活』
東京書籍(c)1992

 メンデルスゾーンのバッハ再演など、19世紀に起こった古楽運動の歴史をたどったものです。手放しの古楽礼賛ではなく、社会的背景や「普通の音楽」との関連も述べられています。ドルメッチやランドフスカなど、個性的な古楽奏者の話も、興味深く読めます。


Early Keyboard Instruments
(The New Grove Musical Instruments Series)
W.W.Norton, New Yrok - London, 1989
ISBN 0-393-30515-3

 初期鍵盤楽器の概説書としておすすめしたい本です。NewGrove音楽辞典の項目に基づき、説明を補足して作成されたもの。チェンバロ、スピネット、ヴァージナル、クラヴィコードおよび関連する楽器の解説、それらの楽器のための音楽についての解説、用語集、製作家索引からなります(英文)。
 なお、パイプオルガンに関しては、同シリーズ"Organ"として別にまとめられています。


■やや専門的な書籍、研究書など

Boalch,D.H.:
Makers of the Harpsichord and Clavichord 1440-1840
Clarendon Press, Oxford, 1995 (Third Edition)
ISBN 0-19-318429-X

 チェンバロおよびクラヴィコード製作家と現存する楽器の辞典といえるものです(全788ページ)。第1部は製作家の経歴、第2部は製作家名が記された現存する楽器について仕様および来歴などが述べられています。(英文)


Hubbard, Frank:
Three Century of Harpsichord Making
Harvard University Press, (c)1965
ISBN 0-674-88845-6

 アメリカのチェンバロ製作家、フランク・ハバードの古典的名著です。およそ300年にわたるチェンバロ製作の歴史を、イタリア、フランドル、フランス、イギリス、ドイツの国別に概説し、同時代のチェンバロに関する記述の英訳など、豊富な資料が添えられています。今となってはだいぶ内容的に古いとはいえ、歴史的チェンバロの理解を深めるための基本的な文献といえるでしょう。(英文)


O'Brien,G.:
Ruckers--A harpsichord and virginal building tradition
Cambridge University Press, (c)1990.
ISBN 0-521-36565-1

 フレミッシュ・チェンバロの代名詞ともいえるルッカース/クーシェのヴァージナルとチェンバロに関する詳細な研究書です。歴史、構造から当時の音楽との関連にいたるまで、豊富な写真とともに記述されています。付録には、現存するルッカース/クーシェの楽器のカタログも付されています。(英文)


Kielklaviere--Cembali-Spinette-Virginal
Staatlichen Institut für Musikforschung Preussischer Kuluturbesitz, Berlin, 1991.
ISBN 3-922378-11-0

 ベルリンの楽器博物館Musikinstrumenten-Museum Berlin(フィルハーモニーに隣接)の所蔵楽器のうち、プレクトラムで弦をはじく楽器、つまりチェンバロ、スピネット、ヴァージナルを詳細に解説したものです。カラー写真、構造イラスト、弦長データからチェンバロ奏法に至るまで扱われています。(独文)


Das Berliner "Bach-Cembalo" --Ein Mythos und seine Folgen
Staatlichen Institut für Musikforschung Preussischer Kulturbesitz, Berlin, 1995.
ISBN 3-922378-13-7

 ベルリンの楽器博物館 Musikinstrumenten-Museum Berlin (フィルハーモニーに隣接)には、「バッハが所有していた」と伝えられる2段鍵盤のチェンバロ(#316)が所蔵されています。本書は、この楽器の分析、復元(コピーの製作)に関する小論文をまとめたもので、巻末にはシャルロッテンブルク城のミートケの楽器のデータも付されています。

 この#316は、かつてはハースHassの作とされていましたが、K.Restleは、楽器構造、スケーリングを詳細に検討した結果、ハンブルグのハラスJ.H. Harass(1707-1778)が1720年から1730年のあいだに製作したもの、と結論づけています。したがって、もしバッハがこの楽器を所有していたとすると、ライプツィヒ時代の可能性が高そうです。

 また、しばしば問題となる16フィート・レジスターは、すでにこの時期には存在していたとしていますが、その目的は低音の増強というよりは、4声コラールを演奏するためだった、というG.Wagnerの論文も掲載されています。(独文)


The Cambridge Companion to the Piano
(c)1998. Cambridge University Pres
ISBN 0-521-47986-X

 初期のピアノの発達とピアノ音楽については意外と知られていません。この本は複数の著者による小論をまとめたもので、第1部「ピアノとピアニスト」、第2部「レパートリー」の2部から成ります。(英文)

last updated: 2008.08.02


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